Wi-Fi Allianceのマーケティング担当ヴァイスプレジデント、ケヴィン・ロビンソン氏に「孫さんがあんなことを言っているけど、反論ある?」と率直に聞いてみた。
するとケヴィン氏は「我々が自信を持って言えるのは、Wi-Fiをこの世から排除したら、セルラーネットワークは破綻する。データトラフィックをセルラーネットワークだけで支えるのは不可能だ。アメリカのモバイル事業者のなかには、アンリミテッドのプランを提供しているところもあるが、ネットワークは劣化しはじめて耐えきれなくなっている。ほかのオペレーターのなかには80%のデータトラフィックをWi-Fiに流しているところもあるくらいだ」と語った。
実際のところ、世界中のインターネットトラフィックの約半分がWi-Fiを経由したものだという。固定やセルラー経由のトラフィックと比べると、いかにWi-Fiが役立っているかがよくわかる。
ソフトバンクも振り返ってみれば、iPhoneを導入したものの、エリアは狭く、さらに3Gのネットワークが劣化し始めていたこともあり、Wi-Fiスポットを積極的に敷設した。Wi-Fiスポットにお世話になっておきながら、さすがに孫社長のあの言い方ではWi-Fi関係者も黙っていないだろう。
ただ、街中にWi-Fiスポットが大量にあっても、勝手に接続しデータが流れない、セキュリティ面で不安があるなど、デメリットがあるのも事実だ。
そこでWi-Fi CERTIFIED Vantageが必要不可欠となってくるのだろう。Wi-Fi CERTIFIED Vantageでは、サービス事業者がネットワークを管理し、一つのアクセスポイントに接続し続ける機器を排除したり、映像や通話などのアプリが中断せずに利用できるようになるという。
ただ、無料Wi-Fiスポットは、現状、2020年に向けて増え続けているものの、ビジネスモデルが確立しておらず「とりあえず設置して完了」という状況になっている。新しい認定プログラムが出てきても、それらに対応した機器に置き換えていくメンテナンスの費用が出にくい状態にあると言われている。
このままでは、古い規格のWi-Fiスポットが何年もメンテナンスされずに放置されていく状況になりかねない。
ビジネスモデルと安全性を両立させる意味では、やはり孫社長の主張が正しいのかもしれない。
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