トルコの暴君エルドアン大統領が企む「オスマン帝国」復活の野望

 

トルコのもう一つの厄介な問題がトルコ領内のクルド族の独立の動きと難民の規制だ。クルド族はトルコ、イラン、イラクなどに住み、その数は2,500万~3,000万人で国家を持たない一つの最大の民族といわれる。なかでもトルコには1,500万人以上がいるとされ、過激集団イスラム国との闘いで功績をあげ、その勢いにのってクルド国家成立を目指している。ただ、クルド族を抱えるトルコ、イラン、イラクは国家成立に反対しており、中東各国では厄介な民族問題となっている。

また中東各国から難民がEUに渡っているが、トルコは欧州への難民を規制し始めた。2016年に中東、アフリカから欧州に渡った難民は約38万人だが過去最大の104万人(2015年)に比べると約7割も減少した。その最大の原因はトルコが規制強化に乗り出したためといわれる。

トルコは20世紀初めまでオスマン帝国を築いた大国だったが第一次大戦を機に国力、領土とも減少した。しかしトルコ民族には、かつてのオスマン帝国への郷愁があり、特にエルドアン政権は、その強権を武器に「新オスマン主義」を目指しているとされる。このことが中東各国やヨーロッパ諸国との火種となって最近くすぶり出し、中東の新たな波乱要因となりつつあるのだ。

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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