幻獣たちのいるところ。鬼才・伊東忠太が仕掛けた築地本願寺の動物を探せ

 

お寺に棲みつく摩訶不思議な動物たち

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正面階段下の獅子像。口が“あ”の形ですね。左奥の像は口を閉じ、右奥の像は口を開いているのがわかるでしょうか?

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正面階段下の獅子像。口が“うん”の形ですね

さて、いよいよ探検の始まりです。

早速、いました。本堂入口の階段下に、獅子が鎮座しています。しかもこの獅子、翼があります。まさに幻獣。いや、本殿を守る聖なる獣ですから、聖獣でしょうか。どちらにしても、有翼のライオンなんて、普通の探検(冒険)であれば、”ボスキャラ”に違いありません。そんなボスキャラを門番に置くなんて…。この先の探検でどんな幻獣が現れるのかと思うとワクワクしてきます。

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あまり見かけない、獅子像の背後からの写真。有翼であることがはっきりしますね

 

ちなみに、この獅子像を通常の寺院に置き換えると、狛犬(こまいぬ)になるのでしょうが、実は狛犬というのは、仏教が日本に伝わる過程で変化して来た存在で、仏教の始まりであるインドのアショーカピラーの天端に安置された獅子像が起源とされているのです。

また、こちらの有翼の獅子像、ギリシャ神話に登場するグリフォンやインドの神鳥とされるカルラ(ガルーダ)といった鳥をモチーフとした幻獣とは違い、獅子そのものをモチーフとしたなんとも不思議な幻獣です。

この獅子像、階段の左右に安置されており、その口元は、いわゆる「あ」「うん」の形にされているのですが、面白いことに、階段の上に上半身だけ彫刻されている獅子像は、この「あ」「うん」が、階段下の像と逆になっているのです。

どの方向から入っても、「あ」と「うん」、人生の最初と最後、すなわち異世界への入口を通るという事を意味するのでしょうか。
そんなところまで深読みすると…やっぱりここは、幻獣界への入口だったのかと感じます。

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牛をモチーフにした像。

扉を抜けて本堂へ足を踏み入れると、何やら視線を感じます。そっと右手に視線を移すと、「」のお目見え。
階段手すりの支柱部分の牛がこちらを見つめています。牛は仏教では神聖な生き物として崇められていますが、こちらの牛はずんぐりむっくりとした肉感がなんとも愛らしい。ただ可愛いだけではなく、同時に強さも秘めているよう。

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クジャクをモチーフにした像

そして、牛の向こうから、不思議そうにこちらを眺めている孔雀がいました。キョトンとした顔をしていますが、こちらの孔雀は阿弥陀経に説かれている鳥の一種ですね。その生態から、物事を包み隠さず、自分の心をさらけ出すものの例えとされているようです。

 

ここで、邪な気持ちを捨てていきなさいー

クジャクの像を見つめていると、そんなふうに言われているようで、なんだか、自分の心が見透かされたようで恥ずかしい気分になりました。

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獅子をモチーフにした像(左)と、馬をモチーフにした像(右)。獅子は、正面階段の像と顔が似ていますね。

いきなり2体の獣を見つける事ができるとは、幸先の良い探検です。さぁ、次にいくぞ!

と、中央扉に足を向けたところで、視界の端に何かが映り込んだ気がして振り返ると、獅子と馬の姿が。こちらもむっくりとした姿形がなんともいえません。馬の足の動きに躍動感を感じますね。
獅子は、神社仏閣の狛犬に見立てられるような神聖な動物であると共に、仏教では、仏の知恵の象徴ともされています。そんな視点で見ると、どことなく賢い顔をしているようにも

また、馬は仏教では珍しいようですが、王族であった釈迦が俗世に旅立つ際に乗っていたのが白馬であったとされていますから、別れや旅立ちの象徴ということでしょうか。ある意味、お寺にふさわしい彫像なのでしょう。

こうした彫像を施した階段は、本堂の講堂入口の左右に存在するのですが、この日は入口左手側の階段は、通行禁止とされており、残念ながら、探索はできませんでした。

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