【時事英語】格差を是正する「ベーシックインカム制度」に欧米が注目

 

貧しい者は子供に十分な教育を与えられないことから、その子供も経済的に恵まれた仕事につけないという悪循環。

過去に差別を受けていた特定の人々が、その時期に経済的、教育的な基盤を作れなかったことからくる悪循環など、事例をあげればきりがありません。

もちろん、災害や戦争などが人間の夢を砕いてしまう悲劇も忘れてはなりません。

欧米の場合、そうしたことで発生する難民を受け入れることが、格差の原因を作っていると指摘する人も多くいます。

従って、そうした人々を受け入れるべきか、将来ある人材のみを受け入れるべきか、はたまた人道的に全ての難民を受け入れ、柔軟で強靱な社会を作ってゆくべきか、議論は分かれています。

これら全ての議論の上に、今「ベーシックインカム」という概念が問われるようになったのです。

ここで、このシステムを考える上で、過去に格差是正のためにとられたいくつかの政策を振り返ってみます。

まず紹介したいのが、アファーマティブ・アクション Affirmative Action という制度です。

これは、もともと社会的に不利益を被っていた人々が公的な職場での採用などで優先されたり、会社等が積極的に雇用した場合に補助金が支給されたりする優遇制度を意味しています。

具体的な事例としては、アメリカのカリフォルニア州などでの、1960年代に公民権法が制定されるまで差別の対象となっていたアフリカ系アメリカ人への職場や教育施設での雇用への優遇措置があげられます。

また、マレーシアでは中国系の人々に比べ、マレー系の人々には経済的にハンディキャップがあるとして、教育機関への入学の優遇や会社経営をする場合、マレー人を必ず株主の一人にするなどといった制度があります。

こうしたアファーマティブ・アクションを逆差別だとして抗議する人がいることも事実です。

また、アファーマティブ・アクションとは別に、北欧などの一部の国では、犯罪者が犯罪に走る原因となる社会的な不公正を考え、罪を犯し収監された者に恵まれた環境でしっかりと教育などの機会を与え、人間としての尊厳を取り戻す扶助をしようという試みも実施されています。

アファーマティブ・アクションにせよ、ベーシックインカム制度にせよ、こうした制度を導入するには、生活保護や失業保険などの福祉政策とは全く異なる視点での検討が必要です。

つまり、これは恵まれない人への補助ではなく、国民全体の生活レベルと安心を保証する国家の基本的な制度なのです。

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