少子化で学生服やランドセルが消滅危機。生き残る術はあるのか?

 

永江さんからの回答

「新規事業開発の糸口」は、今までのノウハウの中にしかないんです。まったく違うところから見出そうとしても絶対失敗します。まずは、今まで蓄積した自分たちのノウハウってなんだろうと見直すところから始めてください。

その上で具体的な開発内容を考える前に、業界を取り巻く現状を見渡してみると、ランドセル業界が縮小すると捉えるこの方の危機感は正しいと思います。

ひとつの根拠は、祖父母層の貧困化です。

今でこそ「シックスポケット(1人の子どもに対し、両親+両方の祖父母という6つのポケットからお金が出る)」と言われて、孫に潤沢に資産がつぎ込まれていますが、将来祖父母枠に入ってくるはずの50代は今、まったくお金を持っていないのが現状です。これを裏付ける具体例が、下宿大学生の仕送り平均額が7万円という数字。最近の大学生の親世代といえば60代も多く、定年退職が近くてお金もないため、ガンガン仕送りができないのです。下宿大学生たちは、一人暮らしのおじさんの生活保護より少ない額でなんとか生計を立てている。結局この親たちが祖父母世代になった時、孫に出してやれるお金がないのは目に見えています。

わたしたちが小学生だった頃のおじいちゃんおばあちゃんは、65~66歳ぐらいでした。当時の定年は55歳。退職して10年でまだ資産もあったんですね。今の小学生の祖父母は70代が多い。後期高齢者となれば医療費もかかるし、決して以前のように裕福でなく、さらにこれからは年金も減ってくるから、より一層余裕がなくなっていくでしょう。

業界縮小が予測できるもうひとつの根拠は、制服の消滅です。

子どもの通学服の自由化が進み、制服が全廃される日も遠くないと感じます。制服に近い存在であるランドセルも同様に、必要ないという学校が今後たくさん出てくるでしょう。すでに自由な校風の学校はデイパックで、小学生だったらランドセルという考え方自体が古くなるのは間違いないと思います。今は「みんなが持ってるのに自分だけ違うのはイヤ」という理由で、子ども自身がランドセルを欲しがりますが、その考え方自体もだんだん変わってくる。

みんなが持ってるからイヤという時代が必ず来るはずです。

以上のことを踏まえつつ、会社が生き残る方法は2つしかないと思います。

ひとつはこの業界で特別な存在になって、他社が潰れても自社だけは生き残る方法を考えることです。つまり超高級品を作るとか、ハンドメイドにこだわるなどの方向です。時代が変化しても、ランドセルを使わなきゃいけないところは一定数残るはずで、そこで生き残るんだったら高品質化しかないでしょう。

ただそんな中でも、富裕層が求めた時の受け皿も絶対必要なわけで、金持ちのおじいちゃんおばあちゃんがランドセルを買う時はここしかないな、みたいに思う存在をめざすべきです。カリモクの家具みたいな、といったらお分かりいただけるでしょうか。これだけ安い家具が巷に溢れる中、それでも家具を買うならカリモク、なんて人がいますよね。そういう存在をめざすというのはあると思います。

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