興味深いのは、こういった作用は中強度の運動を15分程度行った後に採取した血清試料にのみ見られたことです。確かにエピネフリンやノルエピネフリンを投与することでも腫瘍増殖抑制作用がマウスでは見られましたが、心拍数を上げて血行をよくした状態でエピネフリン等が分泌されることにも相乗効果があるかもしれませんね。また、たった15分の運動でむしろ抗がん効果がより高まるのであれば、乳がん患者にとってもハードルが低そうです。
今回の研究では、運動がこれまでの乳がん治療に取って代わるということを示しているわけではありませんが、これまでの乳がん治療に補完的に運動を加える理由がより明確になったと思います。
今回はマウスに腫瘍を移植するというモデルを使った研究でしたが、運動による乳がんの予防効果も気になるところですね。発見前の初期段階の乳がんでも、運動による増殖抑制作用が誘導されることも大いにあり得ると思います。そういった意味で、時々中強度の運動を日常生活に取り入れることでがん予防の効果も期待できるかもしれませんね。
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