ここ1年がリミット。安倍首相が北の核配備を防ぐためにすべき事

 

注目される米トランプ政権の対応

ただ、2017年のトランプ政権の登場で状況は少し変わりつつあるかもしれない。トランプ氏は登場するや否や「北朝鮮を爆撃で火の海にしてやる」といい、軍事シナリオを含めたあらゆる方策がテーブルにあると北を脅すディール(取引)に出ている。これに対し北もグアムや日本への攻撃も示唆している。

この間、トランプは中国とロシアに北へもっと圧力をかけるよう要請したり、安保理の経済制裁などを次々と強化し、石油関連輸出を3割削減するなど国際的締め付けの輪を広げている。こうした「圧力路線に中国ロシアは反対の意向を示し、対話すべきだと強調している。

しかし実際には中国、ロシアとも追加制裁に賛成しながら話合いの糸口を探している。また、トランプ政権と北は水面下では様々な接触、交渉を行なっている模様で、案外トランプ大統領の脅しのディール」はある程度、功を奏しているようだ。

両国の言葉のやりとりをみていると一触即発の状態にあるようにみえるが、共に全面戦争は避けたいのが本音なのだ。

もし戦争になれば、10万の単位で犠牲者が出るし隣国の中国やロシアへ難民が押し寄せる可能性も強い。また北が中国などに向けて核を発射する危険も皆無とはいえない。さらに在韓米軍のアメリカ兵や日本への攻撃、グアム島への攻撃も否定できないわけで、金正恩政権の正常な判断をどこまで期待してよいのかわからない怖さもある。

安倍首相は、最近「国難」という言葉を何度か使っているが、どこまでリアリティをもって言っているのかよく掴めない。本当に戦争となれば国難騒ぎではなくなってくるだろうから、北への「圧力」を口にするだけではなく、一方で北が対話に応ずる条件や土俵づくりを中国、ロシア、東南アジア諸国などに対して行なっていくのが真の外交だろう。

時間はあまりないのだ。北が2年以内にアメリカへ届く小型ミサイル爆弾の開発に成功すれば事は一段と厄介になる。期限は2年もなく、ここ1年が正念場で日本もその時間軸の中で本気で動かなくてはなるまい

(Japan In-depth 2017年10月22日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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