900万人が勉強地獄。中国の「ヤバい受験」が生んだ人材の末路

 

受験勉強で死ぬことないから、死ぬほどに勉強せよ

受験生たちは高校に入ってから、学校と教師と親からなる「勉強せよ包囲網」によって雁字搦めにされ、この三方からの高圧の下で受験勉強に明け暮れる羽目になる。親にとっては子供が受験戦争を勝ち抜いて重点大学に入れるかどうかは最大の関心であり、高校にとってはどれくらいの卒業生を重点大学に送り込めるかは学校の評価に関わる死活問題である。そして担任の先生にしては、自分の教え子の何人か重点大学に進学できるかは、教師としての自分への評価だけでなく年末のボーナスにも大きく響くから、先生も必死である。

たいていの場合、受験生は皆学校の中で寝泊まりするから、わずかな睡眠時間と食事以外の全時間は、教師の厳しい指導下で知識の暗記と模擬試験の繰り返しの中で日々を過ごしていく。全国の高校では以前から、受験生を激励するための名スローガンの一つは流行っているが、「勉強しすぎて死ぬことはない。だから死ぬほどまでに勉強せよ!」というのである。

受験日が後100日と迫ってくると、全国の高校は全校を揚げて「入試百日決起大会」や「最後決戦のための誓いの大会」などを開き、長期間の受験勉強に心身ともに疲れ果てて限界を迎えた受験生たちに追い込みをかけるのである。そして入試前日の日は、ほとんどすべての高校は通常の授業を休んで、受験生を含めた全校の生徒だけでなく、受験生の親、本校から重点大学に進学したOBたち、そして地域の政府幹部までを招いて盛大な「出陣大会」を開くこととなる。

その時、受験生を激励する言葉の描かれた旗やプラカードが学校のグランドを埋め尽くし、政府幹部に続いて校長先生、そして受験生の親代表が続々と登場して受験生たちに檄を飛ばすのである。そして最後、受験生一同は代表者の音頭で「決戦は明日にあり!、重点大学の合格証がわが手にあり!」と、天を衝く大声で一斉に誓いを立てるのは定番である。

これで翌日(普通は6月の初旬であるが)、受験生たちはいよいよ運命の二日間を迎えることとなる。入試の初日から、中国ならではの「感動」すべき風景が全国の仮設試験場の外で見られるのである。

受験生を試験場までに送り届けた親御たちはそのまま玄関口の前で一日も立ち尽くして子供が試験場から出てくるのを待つのである。その際はもちろん、「雨ニモマケズ風ニモマケズ」である。

そして毎年の入試にあたっては、合格するための不正があちこちで行われるが、一番多いのはやはり「替え玉受験」である。闇の業者が「槍手=銃剣士」と呼ばれるプロの受験屋や重点大学の現役の大学生を雇って、さまざまな方法で受験生本人になりすまして試験場に入り、受験生の代わりに試験を受ける。場合によって、試験場の責任者や入試の監視官を買収して「替え玉受験」を実施することもある。

2014年6月、中央テレビ局が「替え玉受験業界」の内幕を暴く番組を放映したことがあるが、この年では、例えば河南省の一省だけで127名の「槍手」が摘発されて逮捕された。もちろんそれは単なる氷山の一角であろう。

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