世界的な株高の背景は、リーマンショックの後の世界的不況を懸念して各国が一斉に金融緩和に走ったからだ。本来なら実需取引に見合う通貨量があれば十分なのに日米欧と中国が供給したベースとなる資金量は10兆ドル(1,130兆円)を超えた。世界の通貨量は危機前の1.8倍。90兆ドルに達したとされる。
この資金が工場生産や新規開発に利用されれば世界は好況の循環に入るのだが、世はIT全盛時代を迎え工場などへの実物投資は少なく、日本のバブル期と同様に不動産投資や投機にまわった。しかもIT時代は通貨量が増えても物価は上がらない。日銀は超金融緩和と超低金利政策で景気と物価の上昇を狙ったが効果は5年経った今も出ていない。
結局、余った資金は投資にまわらず企業、特に大企業の手元に残り超低金利の現預金ばかりが増えているのが実情だ。さすがにこの異常事態を放置したままにしておくわけにいかず、アメリカの中央銀行は14年に量的緩和をやめ、15年から利上げ局面に移行。欧州銀行も17年から量的緩和を縮小し始めた。ただ日本だけは「出口」方法に手を付けていない。
アメリカなどではグーグル、アマゾンなどの新興企業が新しい開発で人気を集めているが、日本はパッとしない。日本の中小企業にも良い企業が沢山あるのに銀行も政府も育てようとしていない。
(財界 2017年12月5日号 第461号)
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