2015年5月、証券や国債などの市場情報を提供する会社でアナリストとして裁量労働制で働き、2013年7月に倒れ心疾患で亡くなった男性(当時47歳)が、過労死に労災認定されました。
男性の業務量は、企業が行った人員削減の影響で契約時よりも大幅に増加。
上司からは「他のチームはもっと残っているぞ」「他の従業員より早く帰るな」「熱があっても出てこい」と出勤を命じられました。
亡くなる前の1カ月の残業は133時間。
半年前から残業は増加し、平均で108時間もの残業が続いていたことが遺族や同僚などの証言からわかっています。
このときも会社は、「居残りは本人が望んだこと」とし、「自分たちの責任ではない」との姿勢を貫きました。人が亡くなっても、ペナルティーを絶対に認めなかった。
これが裁量制なんです。
……なんだか書いていて悲しくなってきてしまったのですが、実は今回の法案では「高プロ」以外にもうひとつ心配なことがあります。
「高度プロフェッショナル制度の創設」と共に、「裁量労働制の拡大」が組み込まれているのです。
裁量労働制の拡大には、年収の制限はありません。
したがって、年収300万円であろうと、200万円であろうと、100万円であろうと、適用の可能性があります。
対象となるのは、「事業の運営に関する事項の実施管理評価業務」と「法人提案型営業」という実にわかりづらい表現になっていて、前者は「管理職っぽい仕事」、後者は「オーダーメイドの商品などを企画する営業っぽい仕事」とおおまかに考えていいと思います。
いずれにせよ“定額働かせ放題・残業代0プラン”とも呼ばれるほど、かなりひどい法案になりそうですので、この件についてはまた改めて取り上げます。
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※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年1月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年1月17日号)より一部抜粋