メディアの劣化が露呈した、「寝屋川監禁死事件」報道の問題点

 

この事件を各紙が報じ始めたのは昨年12月24日からで、大阪府警が同月23日に両親を死体遺棄の疑いで逮捕したことを受け、女性が満足に食事を与えられなかったことや体重19キロだったことなど、次々と異常な実態が報じられていった。

新聞記事は基本的に警察捜査による結果が多く、記事の中心となる「本記」には、その日の警察発表や新たに加わった捜査情報で形作られていく。それは、捜査機関が起訴し、公判を維持するための情報であり、事件の初期段階では勿論貴重ではあるが、それはすべてではないし、捜査目線での情報でしかない。治安維持が目的の捜査機関が自らの役割に徹することは重要だが、メディアはそれを検証するのが役割のはず。その意味においては、あまりにも捜査情報のみを報じている印象だ。結果として「精神疾患に関する情報が薄くて少なすぎることになってしまう。事件の本質の1つは女性が「精神疾患」だったことであるはずなのに、本記でその事実に切り込む記事はなかった。

事件の一報から約2週間の初動に関する本記の記事中、精神疾患に関する表記は、朝日が「精神疾患で暴れることがあり、周囲に知られたくなかった」「小学生の時に精神疾患を発症」「2001年、複数の病院で統合失調症と診断」が主で複数の記事で同じフレーズが繰り返されている。毎日は「2001年に精神疾患と診断」「精神疾患を患い、暴れるようになった」、読売は「娘には精神疾患があり」「精神疾患のあった長女」「精神疾患と診断」、日経は「複数の病院で統合失調症と診断」「精神疾患で暴れるようになり」との表現で、その原因や状態に関する情報はなかった。これら本記で記された事実を並べると、死亡した長女は精神疾患」であり、それは「統合失調症」という病気で、その病気は暴れるものという印象が根付いてしまうのは当然である。どのフレーズも同じようなのは、警察発表もしくは捜査関係者への取材に基づくものであるから、そうなってしまう。また、「統合失調症という病名を避けたような新聞社も見られた

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