私もこれまで総合失調症の方の社会復帰や就労支援に関わってきたが、それぞれの病状は多様で、その病名だけで、何かを捉えようとすると見誤ってしまうから、その日、当事者が感じている状態を聞いて共有するところから、関わりあいが始まる。「統合失調症」は便宜的な符号に過ぎず、患者は解明されていない病気に苦しんでいる、という認識を忘れてはならないと常に考えている。
統合失調症の全人口に対する発病率はほぼ1パーセント弱で、発病は10歳代前半から始まり男女差はないというから、事件で死亡した彼女は普通に病気にかかっただけなのである。症状は「複雑」「多彩」「微妙」「神秘的」という表現が使われるほど、理解が難しく、大きな症状の3つが、「妄想・幻覚」「感情と意慾の障害」「思考と認知の障害」。同時に統合失調症には病状が激しい急性期や、安定している慢性期がある。
このようにみると、統合失調症は「からだの病気」である「内因によるもの」で、特殊な遺伝疾患ではない。同時に治療にあたっては薬物療法とともに周囲の配慮は必須だ。「家族の態度が患者の感情的な安定や症状の再発と密接に関係する」との認識は医療や支援機関の中では一般的。これを語らずして、「疾患」と「暴れる」を繰り返して報じられれば、無用な誤解がまた生まれてしまうだけである。
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