イギリス政府がわざわざ新設した「孤独担当大臣」の悲しい現実

 

イギリスでは、今後研究や調査、統計などを踏まえて孤独を無くす政策を検討することにしているが、イギリスにとって皮肉なことは、イギリス自身がEU(欧州連合)から離脱しヨーロッパで孤立しつつあることだろう。イギリスが正式にEUに“離婚”表明し通知したのは17年の3月で、6月から離婚交渉が始まっている。ただメイ英首相はEUとの交渉で厳しい状況に立たされ、イギリス国内で政権の求心力を低下させているのが実情だ。

特に今後、EUとの本格交渉に入り、イギリスが強味を持つ金融分野で有利な交渉を進めたいとしたが、イギリスの金融自由化は限定的だった。このためEUから離脱すると、これまでEU内で他国と平等に利用できた権利の再交渉を迫られるなど、二国間交渉FTA)に持ち込まれるといった問題も生じている。

イギリスとしてはEUルールの単一市場や関税同盟などの枠からは外れつつ、EU域内では自由にモノやおカネを動かせる権利は残しておきたいが、EU側はイギリスの都合のよい部分だけ確保する言い分に反発している。しかもEUとイギリスの交渉が長引けば世界の金融の中心地・ロンドンの地位も低落し引き揚げる国が出てくる懸念もある。

イギリス自身が欧州や世界から孤立しない方策を早急に立てないと、かつての大英帝国・イギリスが孤独な国になるかもしれない。

(財界 2018年2月13日号 第465回)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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