なぜ生まれ育った国で「宗教」が決まるか。武田教授の「先入観」論

shutterstock_177304088
 

宗教の選択とプロ野球ファン、一見何の関係もないように見えますが、その根底には非常に似た部分があると語るのは、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で中部大学教授の武田先生。「自分の意見とは何だろうか?」という難しいテーマに対して、武田先生が先入観や選択の自由について考察しています。

自分の意見とは何だろうか? 先入観と脳の構造

宗教選択の自由はなし? 生まれ育った国で自分の宗教が決まる現状

どの人も「自分の考え自分の意見」というのがある。人によってはごく穏やかで他人の言うことに合わせる人もいるけれど、逆に意見が違うと、激高するならまだ良いけれど、中には刃傷沙汰になることすらある。国同士の戦争などは刃傷沙汰になる場合だ。

現在でも、「森友問題」というのが騒がれていて、「絶対に許さない」という人がいるかと思えば、「憲法問題や子育てなどを優先すべきだ」とする意見もある。大相撲でも、八角親方をトップとする理事会と貴乃花親方の考えは全く違う。同じ相撲界、同じ横綱の経験者でも相いれない。なぜ人間は意見が違い、争いをするのだろうか?

この問題を少し考えてみる。まず第一回は先入観と脳の構造を整理してみたい。

それにはまず2つの例を挙げる。

第一は、イギリスのEU離脱の問題である。イギリスはヨーロッパ大陸からドーバー海峡を挟んだ島国なので、その歴史や考え方は大陸のほうのドイツやフランスとは少し違う。狭いドーバー海峡ではあるが、第二次世界大戦でも空軍が強く、V2ロケットまで持っていたナチスドイツですら、イギリスに攻め込むことはできなかった。古くはジュリアス・シーザー、そしてナポレオンもドーバー海峡には手を焼いたものである。

だから、イギリスはキリスト教国でもイギリス国教会が支配する特殊な宗教環境にある。一見、カソリックのようでもあり、国教会にはプロテスタントの団体も所属している。ところが、EUに加盟して以来、東欧から多くの労働者がイギリスに移住した。イギリスに移動してきた多くのポーランド人はカソリック教徒であるし、チェコは無宗教と言ってよいほどで、カソリックが人口の10%にしか過ぎない。

だから、東欧からの人が増えると毎週の礼拝さえままならない。イギリス人にしてみれば、就職先は奪われ、日ごろの生活の様式も違う。日本のように「ゴミの日」などがあったら、それこそ大変で、なかなか単一民族ならではの社会習慣を守ることはできない。

print
いま読まれてます

  • なぜ生まれ育った国で「宗教」が決まるか。武田教授の「先入観」論
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け