セクハラ被害者にも意見が飛び交う、日本人のバカげた性差別感覚

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連日のように世間を騒がせた、財務省の福田事務次官によるテレ朝女性記者へのセクハラ問題。しかし、SNS上では被害女性の素性をさらしたり、「色仕掛けだ」と女性側に非があるかのような意見が多く散見されます。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、今回の問題に関連して、男性だけでなく女性からも被害者への批判が出ていることに触れ、日本の「オジさん化」は女性にも及んでいると指摘。グローバル化など程遠い日本のリアルを嘆いています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年4月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

財務省セクハラ問題と意味不明の反応

この問題には食傷気味の方も多いかもしれませんが、24日公開の日経ビジネスに「官僚セクハラを『色仕掛け』と批判する日本の闇ーー米国では「#Me Too」でピュリツァー賞」というコラムを書きました。

● 官僚セクハラを「色仕掛け」と批判する日本の闇ーー米国では「#Me Too」でピュリツァー賞(日経ビジネスONLINE)

なぜ、加害者とされる福田氏より被害者とされる女性の話題でメディアは盛り上がるのか?

いつもの構図ーー。そうです。ネットやマスコミの「おそらく情報をもとに場外から石を投げる。被害者の写真をネットで拡散し、非難する。挙げ句の果てに、「国民の中にははめられたという意見もある」と大臣が発言する。

残念。実に残念。実にシンプルな問題がこんなにも複雑な展開になってしまうのか。

問題は実にシンプルで、仕事関係でお付き合いのある女性に対し、権力を持つ男性が、

「おっぱい触っていい?」
「手、縛っていい?」

という下品な言葉を言い放ったということです。

あんな下品な言葉、たとえ相手が「記者さん」じゃなく、バーなどで働く女性に対してもアウトだし、女性上司が女性部下に言ってもアウト

同じことを奥さんに言えるのか? 試しに言ってみればいい。いかに自分の発言が、幼稚で、下品で、人をバカにしているかがわかると思うのです。 

少なくとも私はどんなに好きな相手でも「おっぱい触っていい?」なんて言われたら「仕事の話してんだろうが! アンタのお母ちゃんじゃないんだよ!」と呆れます。

……いい年をした、良識ある男性の発言とは到底思えません

なのでコラムには、そういった反応への違和感を書いたつもりです。ジェンダー・ステレオタイプという、無意識の価値観の恐さと共に、です。

でも、やっぱり伝わらなかった

ちゃんと受け止めて下さった人、共感してくださった人、「よくぞ、書いてくれた!」といったコメントもいただきましたが、半数以上が参考にならなかった」とし、6割が「(読んでも読まなくても)どちらでもいい」と評価。

奇しくもコメント欄に、「『いじめられる子の側にも問題があるんだ、悪いんだ』という論法が語られるのと同じ」と書いてくださった人がいたけど、その通りだと思います。

人権、人権と耳触りのいい言葉を使うわりには、加害者より被害者を貶めるような発言があとをたちません。 

おまけにSNSでは、福田氏の文字が消え、被害者とされるテレ朝の記者の素性や、部下からの訴えを退けたとされる上司の名前が飛び交っている

これが、つい数年前まで「グローバル化」と呪文のように言っていたわが国のリアルです。

そして、被害者を批判するのは男性だけではなく、女性も含まれていることも、残念としか言いようがありません。男社会はスカートをはいたオジさんを量産したのです。

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