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イラク戦争の「ウソ」がアメリカを没落させた?

ほとんどの読者の皆さまは、「90年代の強かったアメリカ」を覚えておられることでしょう。第2次大戦後、世界には二つの超大国、すなわちアメリカとソ連があった。ところが91年末にソ連が崩壊アメリカは世界で唯一の超大国になった。IT革命が起き、空前の好況。まさに、アメリカ国民は、「この世の春」を謳歌していました。

ところが今は、大統領が、「偉大なアメリカを再び創る!」と叫んでいる。てことは、現在アメリカは、「偉大じゃない」ということでしょう? どうして、これほど急速に没落したのでしょうか? 私は、「イラク戦争のウソ」が大きな要因だと考えています。

まず、「イラク戦争のウソ」について、証拠をお見せしましょう。イラク戦争については、「開戦の根拠が大ウソだった」ことがわかっています。皆さんご存知のとおり、イラク戦争の根拠は、イラクの独裁者フセインが、「大量兵器を保有している」「(9.11を起こしたとされる)アルカイダを支援している」でした。この二つの理由がウソだったこと、アメリカ自身も認めています。以下の記事を熟読してみましょう。

米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定

 

[ワシントン=貞広貴志]米上院情報特別委員会は八日、イラク戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表した。
(読売新聞2006年9月9日)

報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量破壊兵器計画についても、少なくとも1996年以降、存在しなかったと結論付けた。
(同上)

アメリカはイラク戦争で、「大ウソ」をついた。ここまではいいですね。なぜ、ウソをついたことが、アメリカを弱体化させる原因になったのでしょうか? 「バレたから」です。RPE読者さん以外の日本国民は、この仰天真実を知らないかもしれません。しかし、世界的には、とても広く知られた事実なのです。このことは、「アメリカは自由と民主主義を守る『正義の味方』という信仰、信念」をボロボロにしました。

結果どうなったか? 「アメリカ実は正義の味方どころか極悪国家なのではないか?」という国際世論が急速に形成されてしまったのです。こちらを、熟読してください。

「ブッシュ大統領は世界の脅威2位 英紙の世論調査

 

【ロンドン=本間圭一】ブッシュ米大統領が、北朝鮮の金正日総書記やイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界平和の脅威だ──。

 

3日付の英紙ガーディアンは、世界の指導者で誰が平和への脅威になっているかに関して聞いた世論調査でこうした結果が出たと1面トップで報じた。調査は、英国、カナダ、イスラエル、メキシコの4か国でそれぞれ約1,000人を対象に世論調査機関が実施した。英国民を対象とした調査によると、最大の脅威とされたのは国際テロ組織アル・カーイダ指導者、ウサマ・ビンラーディンで87%。これに続いてブッシュ大統領が75%で2位につけ、金総書記69%、アフマディネジャド大統領62%を上回った。ビンラーディンは他の3国でもトップとなった。
(読売新聞06年11月4日)

ブッシュ(子)は当時、「世界の脅威ランキングで堂々2位につけていた。ブッシュがウソをついて、イラク戦争をはじめた。そのことがバレた。結果、「アメリカは、正義の味方ではなく、悪い国」という悪評が広がった。このことは、アメリカ自身に何か「実害」を与えているのでしょうか?

最大の実害は、「求心力が低下したこと」でしょう。たとえば2013年8月、オバマは、「アサドが化学兵器を使った! 攻撃しようぜ!」と主張した。英仏は当初賛成したものの、後に「やっぱやめた!」となりました。なぜ? いろいろ細かい理由はありますが、「アサド軍がホントに化学兵器を使ったのか?」アメリカの主張を信じることができなかったのです。なんといってもイラク戦争の開戦根拠はウソだったのですから。

さらに、2015年3月には、「AIIB事件」が起こっています。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエル、オーストラリア、韓国など、いわゆる親米国家群がアメリカの制止を完全無視し、中国主導「AIIB」に入ってしまった。これには、大きく二つ理由があります。一つは、「儲かりそうだ」。もう一つは、「アメリカを裏切ってもオバマは何もできないだろう」と考えた。

しかし、それ以前に、アメリカが自らウソをつき国際法を破壊したことで、世界の善悪がとても曖昧になってしまった。「アメリカ=善中国ロシア=悪」というわかりやすい図式が崩壊してしまった。結果、世界は、「アメリカ、中国どっちも善悪まざった灰色の存在」という風に認識するようになった。これは、アメリカには都合が悪く、中国には極めて都合がいい状態です。

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