ソロスが見た世界
ソロスといえば、世界で20何番目の超富豪。国際金融資本で、世界中の民主化運動を支援しています。そんな彼は、ブッシュ政権をどうみていたか?イラク戦争がはじまった翌04年、彼は『ブッシュへの宣戦布告』という本を出版しています。この本の中で、ソロスは、「アメリカの没落」を明確に予測していました。
アメリカは今日の世界で、他のどの国家も、またどの国家連合も、当分は対抗できそうもない支配的な地位を占めている。アメリカがその地位を失うとすれば、それは唯一、自らの誤りによってだろう。ところが、アメリカは今まさに、そうした誤りを犯しているのである。
どうですか、これ?
「アメリカがその地位を失うとすれば、それは唯一、自らの誤りによってだろう」
「アメリカは今まさに、そうした誤りを犯している」
つまりソロスは、「イラク戦争は誤りで、それによってアメリカは、自らの地位(=覇権国家の地位)を失う」といっている。これは、まさに今起こっていることですね。では、なぜアメリカは、大きな間違いを犯してしまったのでしょうか?
それは、この国が、「確実なものが存在する」という間違った考えと強い使命感を持つ過激派グループに牛耳られているためだ。
(同上)
ソロスは、なんとブッシュ政権のことを、「過激派グループ」と呼んでいます。彼は、06年に出版された本『世界秩序の崩壊~「自分さえよければ社会』への警鐘」の中で、アメリカと中国についての考えを明らかにしています。
ところが、ここに、皮肉にも愚かな事態が起きた。近隣の大国・中国が基本的に多極主義を受け入れ始めた矢先、アメリカ合衆国が正反対な方向へと動き、国際的な諸制度への疑念を強め、最近の国家安全保障面での難題に対して大幅に一極主義的な治療策を遂行したのである。日本は、この両国の板挟みになった。かたや最大のパトロンかつ保護国ながら、昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきたアメリカ。かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。
ソロスによると06年当時のアメリカは、「昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきた」国である。一方、中国については、「経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある」国。
06年時点のソロスの、「米中観」は明確です。つまり、彼は、「アメリカ=悪」「中国=善」と考えていた。その根本理由が、「イラク戦争」「イラク戦争のウソ」だった。
ソロスのような国際金融資本の動きは、国の経済に大きな影響を与えます。ソロスは08年1月、「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終焉を意味する」と語り、アメリカの死を予言。そして、同年9月、リーマンショックから、アメリカ発「100年に1度の大不況」がはじまります。アメリカは、没落。
一方、ソロスら国際金融資本に好かれた中国は、沈むどころか浮上。その後も9~10%の成長をつづけ、世界は「米中二極時代」に移っていきます。