バスケ審判殴った留学生帰国へ。事件の背景に感じた「見えない鎖国」

 

繰り返しますが、殴ったことは悪い。明らかに悪い。審判は口を10針以上縫う怪我をされたそうですが、「バスケを嫌いにならないで欲しい。続けて欲しい」との願いから告訴などはしないと言ってくれたのが、せめてもの救いです。

つまり、今回の事件は「今回の殴打事件だけの問題ではないのです。言葉も生活も文化も違う異国の地で親と離れて暮らす青年へのサポート体制の欠如が問題の根っこにある。学校側の対応は極めて由々しき問題だと思います。

事件が起きたから「今後は母国語が話せる非常勤教職員を雇うことなどを検討中」などという言い訳は、全くもって意味不明。一体ナニを考えているんだ、と。

日本には目に見えない鎖国がある」――。日本で働く外国人の方は、こう嘆いていました。日本人は旅行者の「外国人」には優しいのに、共に生活する外国人になぜこんなにも冷たいのか?

しかも、こういうコメントをした途端、「それ逆差別じゃん! 外国人は暴力事件起こしても免除かよ!」と、問題のすり替えをする輩が山ほどいるのが残念でなりません。

私は9歳の時、アラバマ州のハンツビルという「日本人がうちの家族だけ」という完全なアウェーに引っ越しました。

6月に引っ越したので、現地は夏休みです。「少しでも慣れるために」と、サマースクールに通わされました。

その時一番困ったのは、「トイレ」です。トイレに行きたいのですが、どこにあるかがわからない。授業も何時に終わるかもわからない。

普通に日本で暮らしていれば、小学4年生がトイレに困ることはありません。「トイレに行きたい」と言えばいいし、「トイレはどこ?」と聞けばいい。なんら問題はないはずです。

でも、アラバマの地の「小学校4年生の黒髪の少女」はどうしていいかわからず、ひたすら我慢しました。必死で必死で我慢しました。涙が出るほど、必死で我慢しました。

…でも、我慢しきれなかった。やっと先生が気づき、他の生徒が気づかないようにケアしてくれたことで、黒髪の少女は「いじめられずに済んだ

そして、その翌日から先生はかならず授業が始まる前に、「キャオル、come here」と私を呼び寄せ、トイレに連れて行ってくれました。

さらに、ランチタイムが終わると「今日は校内をハイキングよ!」と、他の生徒も連れて、学校のどこに、ナニがあるかをひとつひとつ教えてくれたのです。

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