バスケ審判殴った留学生帰国へ。事件の背景に感じた「見えない鎖国」

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6月17日、バスケットボールの全九州高校体育大会で起こった、留学生選手による審判殴打事件。SNSで映像が瞬時に拡散され、テレビ番組などでも驚きを持って報道されました。この件を受け、健康社会学者の河合薫さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、自身の小学生時代の在米生活も例に上げ、国内で共に生活する外国人に対して冷たすぎる日本人を批判するとともに、このような国はどこの誰からも愛されないと記しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年6月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

留学生流血事件と見えない鎖国

やったことは悪い。でも、その背景にあるリアルを知り、胸が詰まりました。

事件は、6月17日、全九州高校体育大会のバスケットボール男子の準決勝で起こりました。

延岡学園(宮崎)の1年の留学生(15)が、審判のファウルホイッスルを不服とし、審判の顔面を殴打。しかも「グー」。平手ではなくグーで顔面を殴り、審判員は出血しその場に倒れてしまったのです。

試合終了後、留学生は監督に抱きつき「ごめんなさい。ごめんなさい」と号泣。見ているのが切ないくらい、2メートル4センチの大きな体を屈め小さな子供のようにワンワン泣いていました

実はこの留学生は、今年2月にアフリカのコンゴ民主共和国から来日した青年で、バスケットはほぼ未経験。身体能力の高さを評価され「延岡学園を勝たせるため」の留学生の1人として招かれました。

ところが延岡学園には彼の母国語であるフランス語を話せる人はひとりもおらず春頃からホームシック気味に。「家に帰りたい」と学校側に訴えていたところで、今回の“事件”が起きてしまったのです。

同校は、23日、この留学生を6月末までに帰国させると発表。そこで明かされたのが、日本社会の負の側面でした。

試合直後からSNS上では留学生への猛烈なバッシングが始まり、中にはヘイト紛いのものや暴力行使を示唆するものまで横行。翌日からは、電話やメールが学校に深夜まで相次いだそうです。佐藤則夫校長は「不測の事態もあり得るので、本人をできるだけ早く帰国させたい」とコメント。

今回の事件は「コミュニケーション不足」が最大の原因とし、今後は留学生の母国語が話せる非常勤教職員を雇うことなどを検討中だそうです。

…なんとも。なぜいつもこうなのか

確かに殴ってしまったことはいけないことです。どんな理由があれ、許されることではないかもしれません。

でも、日本語もわからない、生活文化も異なる15歳の青年を、なんらサポートすることなく来日させるって一体ナニ?

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