台湾人の美徳とされる「日本精神」が、日本人から失われ始めている

 

「倫理道徳とは何か」を問われているのは日本だけではありません。今や世界的現象のひとつであり、世界はどんどん変わっています。90年代の社会主義体制の崩壊後、世界はグローバリズムが主流となり、社会主義は「社会主義文明」どころか、「社会主義道徳」さえも創り出すことができませんでした。

では、日米欧の先進各国は新時代の道徳を創出できたのかというと、ますます社会格差が広がって、シンガポールのリー・クアンユー元首相が唱えていた「アジア的価値も時代とともに崩壊に向かっています。世界各国で家庭の崩壊は進み、学校ではイジメが絶えません。戦前の「教育勅語」や「道徳教育」などは、今は見る影もありません。

戦国末期から開国、明治維新前後に日本を訪れた西洋伝教師、軍人、学者、使節の見聞録を読むと、かつての日本はユートピアのような国だというイメージがありました。私が住んでいる茨城県には、数十年前は農家の畑の前に無人の野菜販売所があって、購入者は代金を自己申告で箱に入れるシステムでしたが、それも今ではすっかりなくなってしまいました。なぜなくなったのかというと、代金を払わないばかりか、収穫前の農産物まで持っていかれてしまうこともあるからです。

私が日本に来た60年代は、戦前の人々がまだ社会の主流でした。日本社会が変わり始めたのは恐らく70年代からではないかと思います。それは日本だけではなく、世界的潮流でした。その渦中で、私は日本社会において「善悪」や道徳を超える文化を発現してきました。そのことをまとめたのが、数年前に出版された拙著『日本人の道徳力─道徳を超える日本精神─』(扶桑社刊)です。

台湾のある大学教授は、この本を翻訳して台湾で上梓する予定です。つまり、台湾でも倫理や道徳についての変化にどう対応すればいいのかに関心が高まっているということでしょう。

私が半世紀をかけて問うてきた「道徳」というものは、決して道徳教育で育成されるものではありません儒教の「仁義道徳」の教育からは、外的強制であり、逆に人間の良心を奪い、偽善者や独善者しか生まず、「欲望最高道徳最低」の社会しか生みません。

新渡戸稲造の武士道が素晴らしいのは、「死とは何か」を問うだけでなく、「実践」を美学にまで高めることができるからです。私は日本の道徳力を求めて半世紀経ちますが、なおも解明できていないことはいろいろとあります。私が、善を超越できるのは美であると思っています。古代ギリシャに「美善」があるように、私はこれからも日本の美と善についての思索を続けていきたいと思っています。

(メルマガより一部抜粋)

image by: seaonweb / Shutterstock.com

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