戦略からそれたトランプ
少し復習してみましょう。
アメリカ大統領、トランプさんの前は、オバマさんでした。オバマさん、1期目(09~12年)は「100年に1度の大不況」克服で忙しかった。2期目(13~16年)は、外交で忙しかった。13年8月、シリア攻撃を画策。同年9月にドタキャンし、世界を驚かせました。
14年2月、ウクライナでクーデター。親米反ロ政権誕生。同年3月、ロシアによる「クリミア併合」。アメリカは、日米欧による対ロシア制裁を主導します。
14年8月、アメリカ、IS空爆開始15年3月、「AIIB事件」。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など親米国家群が、アメリカの制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を決める。これは、「アメリカ没落」と中国の影響力の強さを示す、「歴史的大事件」でした。オバマは、これで「どの国がアメリカの真の敵か」に気がつきます。以後、ロシアと和解し、ウクライナ、シリア、イラン問題を落ち着かせ、中国バッシングを開始した。国際金融資本もオバマの味方。そのせいか、15年16年、中国経済は非常にわるかったのです(高橋洋一先生によると、中国15年のGDP成長率は、-3%程度だった)。
私たちは、オバマの「悟り」を大いに喜びました。なぜ? 皆さんご存知のように、中国は、アメリカ、ロシア、韓国と共に「反日統一共同戦線」をつくろうとしている。
※ 必読、完全証拠はこちら→反日統一共同戦線を呼びかける中国
これを無力化するために、日本は、ますますアメリカ、ロシア、韓国との関係をよくしていかなければならない。日本の対中戦略の柱は、「日本、アメリカ、ロシアによる中国封じ込め」です。オバマさんは、AIIB事件以降、はっきりとそっちの方に動きはじめたのです。
そして、トランプも、オバマの戦略を継承しているように見えました。トランプは、どう見ても「親ロシア、反中国」だった。思いだしてみましょう。
2016年12月、トランプは、蔡英文・台湾総統と電話会談し、中国に衝撃を与えました。一方で、「ロシアとの良好な関係維持に反対するのは『バカ』で『愚か者』」などとツイートしていた。そして、新政権には「プーチンの親友」とよばれるティラーソン(元エクソン・モービルCEO)が国務長官で入りました。私たちは、「いよいよ、中国の反日統一共同戦線戦略も終わりかな?」と喜んだのです。
ところが、事態は意外な方向にむかっていきます。2017年4月、習が訪米。トランプは、習に会い、彼のことが大好きになってしまった。曰く、「われわれの相性はすごくいい。互いに好意を持っている。私は彼のことがとても好きだ。彼の妻も素晴らしい」(ウォール・ストリート・ジャーナル 2017年4月13日)
以後、現在に至るまで、トランプは習の悪口をほとんどいいません。つまり、米中関係は、一気に改善された。
一方、米ロ関係は、トランプの意志に関わらず悪化しつづけていきます。「ロシア・ゲート」が盛り上がったからです。「ロシア・ゲート」とは、
- ロシアが、アメリカ大統領選に介入した疑惑
- トランプ陣営とロシアが結託していた疑惑
- トランプが、捜査妨害していた疑惑
トランプは、変わらず親ロですが、事実上身動きとれない状況にある。