西日本豪雨、東京のメディアによる現実味のない災害報道に違和感

 

5.報道が十分でありません。冒頭掲げた山陽新聞さんのようなリアリティのある報道が何としても必要です。その際に、東京から「顔の見えるキャラ」を送り込むのではなく、NHKなら現地の支局が、民放なら系列局といった具合に、土地勘があり、地元事情に詳しい戦力がきめ細かく状況を伝え、それを全国放送がピックアップするようにしないとダメだと思います。東京から「馴染みのリポーターを送り込んで、断片的に印象論を伝えるだけという低レベルの報道からは、改善策への道筋はハッキリと出ては来ないと思います。

6.四国の愛媛県西予市で、ダムの放水による急速な水位上昇の結果死者も出ているようです。この問題は、日本の治水の歴史においては、長い間先人が苦闘してきた分野です。ダムの放流の際には、下流にどのような情報伝達をすれば良いのかという点で、ほとんどマニュアル化された手順があるはずなのですが、それが継承されていないのか、検証が必要です。同時に、放流が遅れて越流が発生し、最終的にダムの決壊という事態になれば、破滅的な水量の塊が下流に押し寄せるわけで、それを避けるためには放流は止むを得ないということも、この種の事件の報道に当たってはキチンと説明が必要と思います。

7.いつもこうした事態に際して思うのですが、どうして各地の首長特に都道府県知事が率先したリーダーシップを発揮できないのか不思議です。総理のリーダーシップも、周囲がキチンとブリーフィングしていないのか、どうもシャープさに欠ける感じですし、一体どうなっているのでしょうか?

8.JR西日本さんが早め早めに運休を決断したのは賢明で、ここ数年そのような判断が社会的に認知されてきているのも良いことだと思います。次は、他の交通機関との連携、そして官庁や地域の経済界との連携をスムーズにして、帰路の危ぶまれる出勤を止める、あるいは早い時間の帰宅を促すなどの動きに高めていくことが必要と思います。

image by: 首相官邸 - Home | Facebook

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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