なぜ人を守る「ダム」が命を奪ったか。西日本豪雨に見る3つの課題

 

3番目は、今回の西日本豪雨のために、多くの河川ダムや砂防ダムに異常な量の土砂が入っているということです。土砂が入って、それでもダムが決壊していないのであれば、所定の性能を発揮して、下流の被害を食い止めたということは言えます。

ですが、今回の被災で土砂が満タン近く入っているとなると、次の降雨時には新たな土石流を受け止める容量はないということになります。というよりも、降水量を受け止めるキャパも減っていて、大変に危険な状態と言えます。

所轄官庁である国交省などは、既に試算を始めていると思いますが、河川ダムも、砂防ダムも、今回の被災で「決壊しなかった」場合でも、溜まった土石を除去する浚渫しゅんせつの作業は、絶対に必要です。

先ほどのように簡単な数字を使って説明しますと、容量が100のダムに、50の土石が入っていると、キャパシティは半分になっているからです。そして、決壊したダムについては、正に危険箇所であるわけですから、再建しなくてはなりません。

現在は、被災地での生活の復興が最優先ですが、こうしたダムの再建や浚渫にかかる費用について、国としてしっかり検討することは必要になって来ると思います。

image by: Wikimedia Commons

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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