税理士試験の真実
税理士試験の合格率マジックを見破れ
税理士試験は、5科目合格で最終合格となる試験です。その合格率は、国税庁から下記のサイトで公表されています。
平成29年度の科目別合格率を一部列記しますと、
簿記論 14.2%
財務諸表論 29.6%
所得税法 13.0%
法人税法 12.1% …
などとなっています。「学生など時間のある人だったら一年に複数科目を受験する、社会人など時間のない人は1年に1科目ずつ受験していけばよい。合格率は10%以上あるから社会人でも大丈夫」というのがたいてい資格スクールのパンフレットや説明会で話されることです。
ちなみに行政書士試験の合格率は10%程度で推移していますので、合格率の数字だけを見れば「税理士より行政書士の方が難しいんじゃないの?」ということにもなりそうです。
もちろん、税理士と行政書士あるいは他の資格試験とを比較する場合、受験科目の内容が全然違います。税理士試験では会計や簿記、税法を勉強しますが、行政書士試験では全く範囲外です。
反対に行政書士試験では憲法や民法、行政法などを勉強しますが、税理士試験では完全に対象外です。したがって、そもそも税理士と行政書士ではどちらが難しいのか、という問い自体がナンセンスかもしれません。
ただ、実際に受験をする方々は「自分はどちらの資格試験にチャレンジをしようか」を決断する際に、合格率もその有力な判断材料として考えるでしょうから、合格率について正しく理解しておくことは有用でしょう。
では、具体的に「税理士の簿記論は合格率が14.2%だった。行政書士の合格率は約10%だから、行政書士試験の方が難しい」という思考は、なぜ正しくないのか。を明らかにしましょう。
その理由は、受験資格にあります。行政書士試験の受験資格は、特にありません。学歴や職歴、年齢に関係なく誰でも受験することができます。これに対して、税理士試験には割と厳しめの受験資格があります。「大学で法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修した」こと、または「日商簿記検定1級を取得していること」など、それなりのハードルになっています(詳しくは国税庁HPを)。
※行政書士→誰でも受験できる。→合格率10%くらい
※税理士→大学で法律や経済を学んだり、日商簿記検定1級を持っていないと受験できない→合格率14.2%
となると、単純に「14.2%の方が10%よりも率が大きいから合格しやすいんだ」とはならないのではないでしょうか。これが、税理士試験の合格率マジックの1つ目です。
☆まとめ☆
税理士試験にはハードルのやや高い受験資格がある。だから、合格率から見える難易度のイメージより、難しいと考えるべき。