企業は「株主のために利益を出し続けること」が資本主義の掟になっていますが、企業が永続するための法則は、どうやら別のところにあるようです。無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、創業1805年の老舗「井筒八ッ橋本舗」オーナーの津田佐兵衞さんとの対談で、オーナーが大切に守り続けてきた家訓について紹介しています。
なお進まん、94歳老舗経営者の心意気
京都の老舗、井筒八ッ橋本舗。そのオーナーを務めるのが御年94歳の津田佐兵衞さんです。
──家業を継がれて今日に至るまで、最も大切にされてきたことはどんなことでしょうか?
私は経営者としては二流三流の人間ですから、難しいことは考えずに、先祖からの流れを守ろうという思いで家訓を大事にしてきました。
特に第一条にある「利益よりも永続」は一番大事にしてきました。よく他業者の方は損して得取れというようなことを言いますけど、うちでは損はしない代わりに儲けることもするなと。
利益を上げるために目標を定めるんやなしに、いつまでも商いを続けさせてもらえるよう、いい材料で一番いいものをつくるというのが私らの商売の仕方なんです。
──それが企業を永続させるための秘訣であると。
おかげで利益はいつも少なかったですけど、家訓を大事にしてきたからこそ会社も徐々に大きくなって、200名を超える従業員を抱えるまでになりました。ですから私はいつでも家訓のことを一番に考えていますけど、あとは至って普通の人間です(笑)。
ただ、この年まで生きてみてつくづく思うのは、ただ長生きするだけではダメだということです。
──長生きするだけではダメ。
ええ。生きて仕事をすることです。
私は生きている限りは働き続けることが人間としての一番正しい生き方だと思うんですよ。
昨年のことですが、宮崎秀吉さんという106歳にして100メートル走の世界記録を持つ方とお会いしましてね。ものすごくお元気な方で、その影響で私ももっと頑張らないかんと気張り出して、それ以来仕事の量を増やしてやっているんです。
──それはすごいですね。
息子はいったい何が起こったんやと心配しておるようですけど(笑)、宮崎さんのおかげで私は前向きになりました。
他にも最近になって変わったことと言えば、何かにつけて周囲の方々に助けられ、教えられていまがあるということをしみじみと感じるようになったことです。
家訓にも「お客様に感謝、社員に感謝、仕入先に感謝」とありますけど、とにかく様々なご恩に対する感謝の思いから、恩返しをしていきたい、人のためになることやったら何でもやりたいという気持ちでいます。
感謝報恩に生きていきたいというのが、いまの私の心からの思いです。
image by: 井筒八ッ橋本舗HP