東京五輪限定というお題目ながら、上手く行けばそのままなし崩し的に行おうという目論見が透けて見えます。実質、単純労働者の受け入れ拡大という「移民政策」をなし崩しで行う安倍政権の手口もそうですし、サマータイムが繰り返し話題になったのは、経済産業相など官公庁がその野望を秘めているからです。
なぜなら、民間は「フレックスタイム」で十分に対応が可能で、早出残業、シフト勤務も組み合わせれば、「サマータイム」を必要と思う企業はすでに導入しています。だから、東京五輪という、どさくさを利用して導入させ、なし崩し的に継続しようという姿勢は「プレミアムフライデー」という失敗と同じ匂いしかしません。
その東京五輪というどさくさを利用するためのお題目が「アスリートファースト」。東京五輪のマラソンスタート時刻は朝の7時。猛暑が予想される7月、8月の東京で、少しでも涼しい時間にと言うことですが、このところの猛暑で体感したように、朝の7時でも「暑い」。
そこでさらに2時間前倒しして、さらに涼しい朝の5時台のスタートということです。ただ、日の出前後がもっとも涼しいとは言え、熱帯夜を考えると焼け石に水のような気もしますが。
早朝から42.195キロを走らせるのもどないなもんかという気もしますが、そもそも論で、なぜ、この時期でこの時間なのか、あまりメディアは触れません。なぜなら、やぶ蛇になるからです。
東京五輪はもちろん、北京五輪でもそうでしたが、主要競技の決勝が「午前中」に実施されるのは、アメリカ国内のテレビ放送におけるゴールデンタイムにあわせてのことです。莫大な「放映権料」を支払うアメリカの放送局の都合ということ。
また、かつての東京五輪は真夏の猛暑を避けて10月開催でしたが、これまた視聴率を稼げるアメリカのメジャースポーツや、プロサッカーのオフシーズンを避けると7月、8月の開催しかないという台所事情。
いずれにせよアスリートファーストどころかテレビ局ファーストです。このアスリートファーストとは、夜も昼もないブラック企業が、福利厚生としてマッサージ器を設置する程度の話しです。
それでは根本から変えれば良い、とするなら、そもそも五輪の開催地に選ばれません。何かと金銭的な黒い噂の絶えないIOC(国際オリンピック委員会)のご機嫌麗しいことが、五輪開催都市に選ばれる最大の条件なので、こうした銭ゲバ体質への異議申し立ては立候補のとりやめと同義となります。
一方で国内マスコミはこれに正面から異論を唱えることもまた希。たまにコメンテーターが「ぼやく」ぐらいのこと。だって、視聴率第一主義の批判はブーメランどころか、ヒモなしのバンジージャンプのように己を傷つけるからです。
つまり「アスリートファースト」なる言葉は欺瞞であり、官公庁の目論見と、視聴率ファーストの銭ゲバ共の、ゲスな欲望を糊塗する詭弁に過ぎないということです。