動きやすさと通気性を重要視し、風や水も通すことが当たり前だったジャージ素材の常識を一気に変えてしまった企業があります。先人の知恵を借りたその商品を世に広めた戦略とは? MBAホルダーの青山烈士さんが自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で詳細に分析・紹介しています。
先人の知恵
注目を集めているジャージ生地を分析します。
● 学校用体操服・ジャージを製造・販売するカネマスの撥水するジャージ生地「MINO(ミノ)」
戦略ショートストーリー
動きやすさと撥水性を重視する方をターゲットに「特許技術」に支えられた『高撥水』『動きやすい』『UVカット』等の強みで差別化しています。
昔に使われていたわらで作られた蓑(みの)の原理を活用することにより、常識を覆した新しいジャージ生地で、顧客の支持を得ています。でも楽しめることをアピールすることで、顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
先人の知恵
撥水するジャージ生地とは、すごい発想ですね。
もともとジャージウェアは、動きやすいことが価値ですから通気性もあって、伸縮性もあり、軽い素材で作られるのが一般的です。通気性があるということは風通しがよいということですので、もちろん水も通します。
もし、ジャージに水を通さないようにする、つまり、撥水性を高めるにはレインウェアのように風も水も通さない生地である必要がありますが、ジャージ本来の機能である通気性や伸縮性を失うことになります。
要するに、いままでの常識ではジャージ生地で「通気性」と「撥水性」を両立することは困難だったと思いますし、ジャージに撥水性を持たせようとする取り組みは非常に挑戦的だったと思います。
その中で、「カネマス」は特許技術である特殊な編み方によって「通気性」と「高撥水」という相反する機能を両立することに成功したわけですが、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ということわざもあるように困難なことにあえてチャレンジすることの重要性を示してくれていると思います。
おもしろいと思ったのが「MINO」は「わら」で作られた「蓑(みの)」からヒントを得たということです。現代では、「蓑(みの)」を使われている方を目にすることはなかなか無いとは思いますが、かつて使われていた雨具の技術が現代に活かされるというのは驚きです。
ちなみに、最新技術の結晶とも思える地上634mの高さを誇る東京スカイツリーにも昔の技術が使われています。五重塔(ごじゅうのとう)などの多重塔で使われている「心柱(しんばしら)」に似た構造を取り入れることで、建物の強度を上げるとともに、地震の揺れを吸収する効果もあるそうです。
「先人の知恵」の偉大さを改めて感じますね。
そして、今回の事例で思い出した言葉があります。
「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。」
これは万有引力の法則の発見で有名なニュートンの言葉なのですがここでいう巨人というのはまさに「先人の知恵」も含まれるでしょう。今回の事例では、何か新しいものごとを発見する際には「先人の知恵」が重要な役割を果たすことがあるということを改めて示してくれたと思います。
今後、「先人の知恵」が活かされた「MINO」は、様々な企業とのコラボレーションを図っていくようですので、どのような商品がリリースされるのか注目していきたいです。