アメリカでは、大手スポーツショップが軒並み閉店もしくは業績を落としているそうです。ネットショップの台頭がもたらすこの嫌な波は日本にも当てはまってしまうのでしょうか。無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さんが占います。
ネットショップの壁
アメリカでは、スポーツ小売店の苦境が続いています。2016年5月には、最大手のスポーツオーソリティ─が463店舗を全部閉店しました。続くディックススポーツやフットロッカーも業績を落としていると聞きます。大変なことになっているようです。いったい、何が原因なのでしょうか。
アマゾンなどのネットショップの台頭が大きな原因だとも言われています。それは、価格競争の問題でしょうか。どうも違うようです。
私は、アメリカ消費者の購買行動が変化したためではないかと思っています。アメリカの小売業は、ショッピングセンターの増加とともに規模を拡大して来ました。ところが、そのショッピングセンターに出かける人が急激に減っていったのです。何故でしょう。
ショッピングセンターは、遠い郊外に建てられ、だだっ広い売り場で商品を探すのが大変です。おそらく、多くの人が不便に感じていたに違いありません。そこへ登場してきたのが、ネットショップ。家にいながらワンクリックで商品を届けてくれるのですからこんな便利なお店はありません。
ネットショップで物を買う人が増えたのは、広大なアメリカでは当然の成り行きだと言えます。そのショッピングセンターの衰退とともに、有名なアパレルチェーンや家電チェーンが倒産したり業績の悪化を招いたりしました。スポーツチェーンも例外ではなかったということです。では、日本の場合はどうでしょうか。
日本のスポーツショップの場合
日本もアメリカと同じようにショッピングセンターの増加でいくつかのスポーツチェーンが売上を伸ばしていきました。しかし、日本の場合はアメリカのように急激にショッピングセンターが減っていくことはないだろうと思っています。郊外にあるとはいっても、それほど不便な立地ではありません。
それでも、今までのようにショッピングセンターが増えることはないでしょう。少しずつ減っていくのではないでしょうか。そうなれば、ショッピングセンターに出店をして伸びてきた大手チェーンは戦略を変えざるをえません。ですから、ネット販売に力を入れ始めた大手もあります。
では、地域のスポーツショップはどうでしょう。消費者がネットで買うという行動に影響を受けているのでしょうか。
実は良くも悪くも影響を受けているのです。目先がきくお店は、もう10年も前からネット販売に力を入れています。そして、いくつかのお店が成功しています。ネットの売上だけで年間数十億円の規模になったところもあります。うまく時代の波をとらえたわけです。
一方、ネットにあまり力を入れなかったお店の中には、ネットショップにお客をとられたと騒ぐところもあります。しかし、かえってネットに力を入れなくてよかったのです。なぜでしょう。
ネット販売を伸ばしてきたお店は、今ちょっとした壁に当たっているからです。売上が思うように伸びません。それどころか、下がり始めたところもあります。利益も取れなくなっています。どうしてでしょうか。