レーザーディスクの「パイオニア」に倒産危機、復活の目はあるか

 

全ては新技術への対応遅れ

これまでのパイオニアは苦難の連続でした。

同社は今年に創業80周年を迎えた老舗の企業です。祖業は音響機器事業で、創業者が海外製スピーカーの音に感動し、それを再現したダイナミックスピーカーを1937年に開発、翌年に「福音商会電機製作所」を設立したのが始まりです。

60年に業界初となるセパレート型のステレオを発売したのをきっかけに一躍有名になりました。高度経済成長期の70年代から80年代には空前のオーディオブームが沸き起こり、高音質な音を求める人を中心に人気を博すようになります。山水電気(14年7月に破産)、トリオ(現JVCケンウッド)とともに「オーディオ御三家」と呼ばれるようにもなりました。

しかし、ウォークマンなど従来と異なる音響機器が登場したほか、音源技術や音源記録技術のデジタル化などにより御三家の優位性は次第に低下していきました。新技術への対応に遅れたことが影響したのです。そして今やスマホで手軽に音楽を聴ける時代になっており、オーディオ機器はすっかり廃れてしまっています。

レーザーディスクカラオケも新技術の登場により衰退しました。81年に高品質の音と映像を1枚のディスクで表現する業界初となるレーザーディスクカラオケを発売すると、「絵の出るカラオケ」としてカラオケボックスやクラブなどで人気を博すようになりました。しかし、その成功にあぐらをかいている間に92年になると通信で楽曲を提供する通信カラオケが登場し、レーザーディスクカラオケは退潮、収益の柱を失ってしまいました。

97年に発売した世界初となる家庭用の大型プラズマテレビも同様に衰退します。一時は圧倒的な国内シェアを誇りましたが、大型化・低価格化した液晶テレビに市場を奪われるようになりました。10年にはプラズマテレビ事業からの撤退を余儀なくされています。またしても新技術によって苦境に立たされてしまいました

15年には祖業のAV(音響・映像)機器事業を音響機器メーカーのオンキヨーに譲渡することを余儀なくされています。また、ディスクジョッキー(DJ)向け機器事業を同年に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツに売却しています。DJ機器は好調でしたが、カーエレクトロニクス事業に経営資源を集中させるため、決別することにしたのです。

現在のカーエレクトロニクス事業の主力製品であるカーナビは、市販モデルで世界初となる製品を発売した90年が始まりとなります。オーディオ開発で培った技術をカーナビで生かし、「カロッツェリア」の名でカーナビのトップブランドに育てることに成功しました。しかし、カーナビもスマホのカーナビアプリという新たな技術の登場で苦境に立たされようとしています

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