ターゲットは露と真の敵「中国」。米INF離脱で変わる世界勢力図

 

10月21日、米が露との核廃棄条約(INF)離脱を示唆、その理由を巡り米露で主張が対立しています。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、冷戦当時、世界で繰り広げられた米ソ軍拡競争がINF締結により軍縮された経緯を解説し、今や「INFに無関係の中国は制限なしで独自軍拡が可能」という新たな脅威の浮上を指摘しています。

アメリカ「INF条約から脱退へ」てなんですか~?

トランプさんが「INF条約脱退の意向を示した」ことが、大きく報じられています。今回は、これについて学んでみましょう。

まず、基本から理解しましょう。INF条約って何でしょうか?「中距離核戦力全廃条約」(Intermediate-range Nuclear Forces、INF)のこと。1987年にアメリカとソ連の間で締結されました。背景は?FNN PRIME10月21日に、フジテレビ解説委員・能勢伸之さんの解説が載っています。

1976年、旧ソビエト連邦は、米ソ戦略核制限条約(SALT II)で、三段式SS-16大陸間弾道ミサイルと共通コンポーネントを使った二段式の中距離弾道ミサイルSS-20を就役させた。最大射程は約5000kmとされ、5,500km以上とされる大陸間弾道ミサイルの範疇には入らない。従って、戦略核兵器には当たらず、当時の戦略核制限条約の範疇外であり、同条約で生産や配備に制限を掛けることができない兵器だった。

なんかよくわかりませんね。射程距離5,500km以上は、「大陸間弾道ミサイル」(ICBM)に分類されます。米ソ冷戦時代、ICBMは、両国を完全破壊することができる。それで、第一次戦略兵器制限交渉が行われ、1972年に締結されました(SALT1)。ところが、ICBMつまり5,500kmよりも短い射程のものは制限がない。つまり中距離核ミサイルはいくらでもつくれる。そうなると、たとえば、アメリカの同盟国であるNATO諸国、日本などが危険にさらされます。で、どうしたか?

米本土には届かないが、米の同盟国・NATO諸国や日本には優に届く。これは、米国が同盟国に約束してきた拡大抑止「核の傘」の信頼性を損なうものだった。そこで、NATOは1979年、米本土ではなく、NATO欧州諸国に配備すれば、ソ連に届くパーシングII準中距離弾道ミサイルとトマホーク巡航ミサイルの地上発射型グリフォン巡航ミサイル・システムの開発と配備、そして、ソ連と交渉を行うという「二重決定」を1979年に行った。
(同上)

一方で、「俺たちも中距離弾道ミサイルを配備するぞ!」と脅しつつ、交渉のテーブルに引き出したと。結果は?

米ソがINF条約に署名したのが、1987年11月8日。結果は、中曽根首相の主張通り欧州に限定せず、米ソ(後にロシア)は、射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイルを全廃することで合意。
(同上)

めでたく「中距離核戦力全廃条約」(=INF条約)締結となったのであります。

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