販売ノルマなし。北海道土産の定番「六花亭」驚きのサバイバル術

 

こんな会社で働きたい~驚き!六花亭の独自制度

そこで始めたのが「六輪」という社内新聞の発行だった。社内新聞といえば普通は年に数回程度だが、六花亭は毎日発行、30年前から続けている。その中身は「ヤンキースタジアムに行った」というプライベートな経験談から、「棚卸しは1週間単位でやるべきでは」といった仕事の改善提案まで。従業員発の意見や感想が掲載されている。

「私の書いた情報や導入したシステムに『不便』とか『良かった』という生の声が載るんです。『次はこうしよう』と思うし、相手の顔が見える」(システム開発部・向雅也)

そんなことができるのは「生の声」を集めるシステムがあるからだ。それが「1人1日1情報」という制度。従業員は毎日、仕事が終わると言いたいことを200文字程度で作文し、会社に送信する。翌日、その原稿は集められ、小田の後を継いだ経営陣の元へ。多い時は1000通近くになる「生の声」。経営陣は全てに目を通し、「六輪」に掲載する「声」を選んでいく

「小さな不満なども書かれていて、現場で見ている以外の部分を、それを読むことで知ることができます」(六花亭製菓社長・佐藤哲也)

これには従業員の思考を変える効果も。洋生1課・五十嵐菜穂子は「別の課ではこう頑張っていると知ると、自分たちも効率を上げられないか、いろいろ考えます」と言う。焼き菓子を担当する焼物2課の松尾俊宜は、「六輪」に載った提案で大きな成果を上げた。

松尾が考えたのは、パイ生地を伸ばす時にどうしても出てしまう端の部分の廃棄ロスを減らす方法。生地の伸ばし方をイチから見直し手順を変えることで、廃棄ロスを4割以上削減させた。「なんでこうなるんだろうと考えなければ気づかなかった。常に考えて仕事をしています」と言う。

社内新聞で従業員との距離を縮めながら、小田は働きやすい環境も整備してきた。例えば、働き方改革で出てきた「残業ゼロ」はとっくに実現。従業員は29年連続で有給休暇を100%取得している。

せっかく取った休みを有意義に過ごしてもらうための社内旅行制度も。社員でもパートでも、6人以上で旅行すると、会社が旅費の7割を負担してくれる(年間20万円まで)。「一生懸命働いて、一生懸命遊んで、遊んできたからまた頑張ろうと思えるんです」(洋生2課・田中典子)

頑張った人を讃える報償制度は「今月の顔」だ。焼物4課・川村春奈ら「今月の顔」受賞者のために開かれたのが、中札内村「六花荘」での宴。とびきりのウニや大トロをプロの寿司職人が目の前で握ってくれる。小田をはじめとする役員たちも接待に参加した。最後には20万円の特別ボーナスも進呈。「そんなに『今月の顔』を取りたいと思っていなかったけど、この会に来て、もう1回取りたいなと思いました」(川村)

旅行支援や「今月の顔」の他、最優秀社員には「カナダ旅行と100万円」。返さなくてもいい月6万円の奨学金など、さまざまな制度がある。菓子作りは地道な仕事。だからこそやる気を引き出す制度や働く環境を整え、従業員の質を上げていく。それが企業の永続につながると小田は考えている。

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