販売ノルマなし。北海道土産の定番「六花亭」驚きのサバイバル術

 

唯一無二の人気菓子店~六花亭の秘密

北海道中札内村の六花の森工場。ここでは看板菓子「マルセイバターサンド」を1日20万個製造している。そのビスケット生地を作る部屋を覗いてみると、機械で生地をこねていた。ここまではよく見かける光景だが、続いて職人が手作業でこねていく。すべての面を同じ硬さにする職人芸。こうしないとあのサクサクした食感は生まれないという。これを20万個分、やり続ける

「やわらかい部分、硬い部分がないように、手の感触だけを頼りに触ってもみ込んで均一にするんです。機械では均一にはできない」(製造管理室・藤田楨市)

大量生産でありながら職人の手作業を惜しまない。これが小田のこだわりだ。小田の菓子作りの原点となったのは茶道。若い時から50年近く続けていて、大きな影響を受けてきたという。茶道から学んだのは「時間が生み出す価値」。例えば、作られてから400年と言われるお盆。「黒の漆の上に朱の漆をかけて、使っている間にまだら模様になってくる。時間と共に味わいが出てくる。こんな企業になりたいんです」と言う。

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「時間を重ねる事で、価値を高める」。商品にもそんな思想が反映されている。「マルセイバターサンド」は発売から41年。マドレーヌの「大平原」は発売から55年。六花亭には「時間を重ねた」ロングセラーが数多くある。長く愛される商品を生み出すための秘密は、商品開発室のホワイトボードにあった。そこに書かれているのは、現在改良中の商品。発売後も改良を加えているのだ。

その1つが今年3月に発売したばかりの「北加伊道」(120円)。すでに120万個を売り上げた人気商品だが、小田には気に入らないところがあった。今売られている「北加伊道」は四角いパイ生地の上に餡を置き、折り畳んで包むという作り方。しかし、これだと4枚重なる部分ができ、上下で火の通りが変わってしまう。そこで作り方を根本から見直し、2枚のパイ生地を使って重なる部分をなくしてみることに。これなら上下で、火の通りに差は出ないはずだ。

試作品を試食した小田は、「やっぱりこっちですよ。新しい製法のほうが理にかなっているよね」。こうして一度発売した商品も、絶えず進化させているのだ。「今も支持されているお菓子は、例外なく発売した時より良くなっています」(小田)

小田には経営にもポリシーもある。それが「売り上げや規模の拡大を追わない」こと。「“売り上げ”をはなから否定するわけではないが、『売り上げが目標でない』ことははっきりしている」(小田)

六花亭には売り上げ目標も販売ノルマもない。物産展でどれだけ売れても、東京には進出しない。それでいて売り上げは200億円を叩き出す。「企業の永続性につながることかどうか。これだけです。永続性につながることであればやる。『あってもなくてもいいもの』ならやらない」(小田)

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