7割のカーナビで使われる地図メーカー「ゼンリン」急成長の理由

 

ゼンリンの調査員の胸元を見るとみんな何色ものペンを差している。実は色ごとに、使い方のルールがあるという。例えば、解体された建物があれば赤色で消していく。まだ完成してない建設中の建物は緑でメモしておく。

地図に載せるべき情報が年々増えていく中、10年ほど前から加わった、新しい調査項目があるという。「ピンク情報のことですか」と言うのは調査員の豊田康浩だ。その情報が使われるのはカーナビだ。

例えばカーナビに「江戸東京博物館」を入力する。旧式のカーナビだと、目的地の近くに来ると「目的地周辺です」でナビの案内は終了。入り口が見当たらないということがよくあった。だが、ピンク情報が入った最新のカーナビは、建物の入り口までちゃんと案内してくれる。「道路2面に面している建物であれば、ピンクの線を引くことで、道路のこっち側に面してますよ、と」(豊田)。車がちゃんと入り口に横付けできるのは、ピンク情報のおかげなのだ。

さらに、新たな地図を作るために導入されたのがハイテクカー。ルーフには360度撮影可能なカメラと4台のレーダーを搭載。この車で日本中の道を走りまわり、道路周辺の風景を撮影。その映像から道路上の標示や標識を読み込み、データベース化している。

こうした情報を何に使うのかというと、自動運転だ。自動運転というと、センサーで周りを検知しながら走ると思われがちだが、目的地までのルートには地図データが必要。「交差点に信号と停止線がある」という情報には次世代の地図が欠かせない。自動運転実現のカギは地図メーカーが握っているのだ。

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便利を全国に広げたい~100億円を投じた決断秘話

ゼンリンの創業70周年を記念した大運動会が開かれた。グループの全社員3000人が集まった初めてのイベントだ。普段交流のないグループ間のつながりを強化することが狙いだという。今や大企業となったゼンリン。しかしもともとは九州の出版社だった。

ゼンリンの始まりは、戦後間もない別府で創業者・大迫正冨が立ち上げた、観光案内を作る小さな出版社。戦後も落ち着くにつれ、別府温泉への旅行者も増加していった時代。温泉の由来や効能、観光スポットの情報を紹介した本は重宝されたという。

だが、本そのものより人気となったのが、付録としてつけた地図だった。温泉宿から共同浴場、細かい道まで余すところなく記されていて、旅行者はもちろん、道を教える宿の人にも大評判となった。地図の可能性を確信した大迫は地図作りの会社へ転身を図る。それがゼンリンだった。

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