7割のカーナビで使われる地図メーカー「ゼンリン」急成長の理由

 

人命救助に欠かせない~知られざるゼンリン地図

今年7月、西日本各地を襲い甚大な被害をもたらした西日本豪雨災害の現場でも、ゼンリンの地図が人命救助の役に立っていた。停電していても使えるから紙の地図が重宝されている。特に被害が激しかった広島市の懸命な捜索活動の現場でも「昔から消防はこれ一本です。これがないと現場に行けない」という声が。他のどの地図よりも詳しいゼンリンの住宅地図だからこそ、こうした現場で頼りにされるのだ。

今回のような大きな災害が発生すると、ゼンリンでも災害対策本部を設置。被災した自治体に地図を無償で貸し出すという。しかし社長の髙山善司(56)は、地図メーカーとしてさらに一歩進めた取り組みが必要だという。「地図の役目はこういうことだという使い方とか、『ああ、そういう使い方ものできるのか』ということをうちが伝えないとダメなんです」地図情報をより効果的に使えば、救助や復旧活動はよりスムーズになる。だから社員が直接現場に入るべきだと考えているのだ。

そんな髙山の考えの一つがすでに動き出していた。去年の九州北部豪雨で大きな被害を受けた福岡県朝倉市とともに作ったのが「気象災害予測支援システム」。たとえば河川に氾濫の恐れがあると、赤色で浸水予想区域が示される。これが住宅地図と連動。高齢者など支援が必要な人の家が赤く表示されるから、いち早く避難誘導できるという。

実際、今回の西日本豪雨でも役立ったのが、朝倉市全域の地図が表示された画面。ライブカメラの画像で市内を流れる河川の状況がリアルタイムで表示され、それぞれの水位も分かるようになっている。「このシステムも参考にしながら順次避難指示を拡大していきました」(防災交通課・二宮正義課長)

少しでも早い救助活動につなげるために、ゼンリンはこのシステムを全国に広げようとしている。「生活が豊か・便利になることに対して、地図のデータベースが支援できるようにやっていきたいと思います」(髙山)

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「便利になった」を支える~ハイテク地図の秘密

ゼンリンの地図作りの現場に密着してみると、その根幹は驚くほど地味な作業だった。全国に1000人いる調査員が、毎日6時間歩き回り、1軒1軒その目で確認していく。都市部では建物の変化が激しいから、毎年地図を更新。新しいビルを発見すると、その形や階数をチェックし、地図に書き込んでいくのだ。

東京・青梅市。ゼンリンの調査員・須沢健二が目指すのは、集落から20分も離れた山奥。そこには1軒の民家があった。前回の調査では空き家だったが、今も空き家かどうか、確かめる。こうした空き家情報は、自治体や消防などが災害の時、救助が必要かどうかを判断する情報になるという。だから必ず1軒1軒確認し、地図に落とし込んでいくのだ。「自治体さんから要望があれば、空き家の情報を提供させていただいています」(須沢)

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