【アベノミクス正念場】「景気回復」と「財政健全化」、「二兎」を追うとロクなことにならぬ

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アベノミクスはいよいよ「見せ場」は過ぎて「正念場」を迎える

『山崎和邦の投機の流儀』第134号(2014年12月28日号)

これを乗り切る経過で「土壇場」を通るが、「修羅場」に来ることはなかろう。

「第3の矢」と言うのは、換言すれば構造改革で、成長を推進させ民間を活性化させるということだ。これを一言で言えば、要は規制改革、または撤廃だ。ところが官僚は過去からある法規を運営することが業務だから「過去からある法令・条例」を変えることは、彼らの秩序の破壊につながる。

「2/3を与党が確保したわけだから、やる気があれば何でもできる筈だ」と思われている。そこを官僚が妨げるし、族議員が障害の味方をする。さあ、安倍さんよ、自分より知能のいい、しかも担当実務には長けている官僚とどう進めるか?ここが正念場であろう。

「経済優先」を旗幟鮮明にして株高基調は維持しているが、上記の経緯を市場は凝視している。

日本は98年のデフレ入り以降、初めて雇用者報酬は名目・実質ともに前年を上回る増加が見込まれ、設備投資も回復、あとは消費が回復すれば、デフレ脱却は確実性を帯びてきた。故に今回の消費増税先送りは賢明だったはずだ。財政規律派は反対したが、今また増税したら全てを水の泡にする恐れがあった。財政規律派は国家百年の計ばかりを言って愛国心に訴えても、当面成功しつつあるデフレ脱却を潰したら税収も減ってしまうではないか。

大きな間違いさえしなければ、日本経済は着実に回復軌道に乗る。

自民党の選挙のタイトルは「景気回復 この道しかない」といのだから、「回復」と自ら言っていることは「今は後退期に入っている」ということを認めているのだ。その自覚はある。

97年の橋本失政と大違いだ。彼は四半期のGDPが年率3.5%で、G7の中で一番良かったから、慢心して無理な財政再建に取り掛かって日本経済を破壊した。これが橋本失政である。2年後に山一、三洋証券という世界規模の2大証券が破綻し、北拓銀行という大都市銀行も他の銀行も四社が1カ月内に破綻し、日本経済は地獄の淵まで来た。財政規律派は「景気回復と財政健全化」という「二兎」を追うとロクなことにならないということを歴史に学ぶべきだ。

そこへ行くと、その後の小渕総理は或る意味では聡明だった。「私は二兎は追わない」と言って財政出動で景気浮揚させITバブルというオマケまでついた。

 

『山崎和邦の投機の流儀』第134号(2014年12月28日号)

著者:山崎和邦(大学教授/投資家)
野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て、武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年の現職の投資家。著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)など。メルマガ「週報『投機の流儀』」では最新の経済動向に合わせた先読みを掲載。
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