全国に広めたい、手間暇かけた「とりかわ」の味
鶏の皮焼「とりかわ」、「かわ焼き」もまた、博多を代表する料理だ。
これを世に広めたのは「かわ屋」。創業者の京谷満幸氏は、とりかわを考案した名店「権兵衛」から独立。
福岡に2店ある「かわ屋」は、福岡市内のみならず、全国からとりかわを食べにやってくる顧客で、連日賑わう繁盛店になって久しい。
とりかわは柔らかい鶏の首の皮肉を1本1本、串に巻き付け、6日間掛けて7、8回も焼き込む。皮肉は臭みのもとになる余分な脂や血合いを取り除く下処理を丹念に施し、焼き、タレ漬け、寝かしの工程を6日間繰り返す。できたとりかわは、表面はパリっと中はモチっとした食感を持ち、深く染み込んだ甘いタレの旨味がとりかわの風味を引き立てている。
ビールなどのお酒も進み、1人10本、20本を平らげる顧客も珍しくない。
現在、このとりかわの味を全国に広めるため、九州を除くエリアの店舗を、大手外食企業ジェイグループホールディングス傘下のかわ屋インターナショナル(本社・名古屋市中区)という会社が経営し、「博多かわ屋」のFC展開を進めている。
かわ屋インターナショナルは2016年9月に設立された。店舗は、東京都、愛知県、静岡県、富山県、三重県、宮城県に19店あり、量産できるノウハウが完成。今年に入って10店を一挙にオープンするといったように、急成長モードに入っている。
同社では「福岡の出身者や、福岡に住んでいた人が懐かしがって、よく飲みに来てくれる」と手ごたえを感じており、博多料理の強さを実感している。
人口増の福岡パワーが料理人気に拍車
博多区をはじめ7つの行政区を持つ福岡市は人口約158万人、都市圏(10%雇用圏)人口約257万人を抱え、改めて言うまでもなく九州随一、日本でも6位の大都市である。しかも、2000年の人口約134万人から18%も増えている。
このような福岡市の持つ発展性とエネルギーも、博多料理の人気に拍車をかけている。
福岡市の発展と共に、1987年の「なんでんかんでん」オープンに始まる豚骨ラーメンブーム、1992年頃と2003年頃からの2回にわたるもつ鍋ブームが東京で起こり、全国に波及して、博多料理のうちの一部が既に人気になっていた。
今は、このような個別の料理のブームをベースに、博多は安くて旨いB級グルメの宝庫だというイメージが定着し、博多料理全般の愛好者が増えている。
千円で酔える“センベロ”大衆居酒屋のブームにも後押しされて、ワンランク上の屋台料理を集めた気楽に入れる博多料理の人気に波及しているのだろう。
image by: 長浜淳之介