「関東人に合わせた博多の味」という創意工夫
本場・博多ではそれぞれ細かく専門店が発達していて、「博多劇場」のように博多の名物を一堂に集めた店はほとんど見かけない。その点でユニークである。しかも幸田業態長によれば「味はそれぞれの料理で、特に名物は手づくりで専門店に負けないレベルを追求している」とのことだ。
ただし、そっくりそのまま博多の味を出しているわけでなく、関東の人の好みに合わせて若干の変更を行っている。
たとえば、看板メニューの「鉄鍋餃子」は博多にある繁盛店をベンチマークしているが、博多で一般的に売られているかというとそうでもない。しかし博多流の柚子胡椒で食べるのが珍しく、顧客たちから面白がられている。
「焼きラーメン」
「牛もつ鍋」は博多ではシンプルな味噌味、醤油味だが、同店では創作性を加えて、金(牛テールの塩スープ)、赤(ピリ辛もつチゲスープ)、黒(黒醤油スープ)と3つの味が選べるようにした。
また、もつ鍋に明太子を入れた「明太もつ鍋」が当たっているが、博多ではまず見ないメニューである。チーズリゾットで締めるのもユニークだ。
「おでん」はかつおダシの効いた、関東で一般的な、博多を感じる商品ではない。
一方で、本場・博多の味を追求した商品群もあり、明太子は名店「ふくや」監修の昆布ダシで味付けしたオリジナル商品を開発。
「博多串焼き」は博多にあるものを出しているが、つくねだけはこだわって大葉と柚子が入っており、さっぱりと食べられるのがウリだ。
「ごまさば」は博多から空輸で取り寄せた生サバを使っている。また、博多の料亭「稚加榮(ちかえ)」の「いわし明太子」を販売しているのも売りとなっている。
宣伝の面では、アプリに力を入れており、面白企画を連発している。たとえば、オフィスにある電卓や定規、セロテープなど文房具を1つ決めて、持ってきた数だけドリンクを無料にして、グループ客を集める(現在は上限5杯までに変更)。
また、年に2回「看板男子女子総選挙」を実施している。アプリ会員になると、1回の来店ごとにスタンプが押され、投票権1票を付与。最も輝いていた店舗スタッフを、顧客の投票で決め、上位7名を中心に28名がアプリ内で発表され、ポスターに掲示される。スタッフと顧客のコミュニケーションが促進される効果があるという。
こうした飽きさせない企画が当たって、約24万人がアプリをダウンロードしている。顧客の40%が会員になっていて、リピーターにより安定した収益基盤ができている。
今年前半はリピート率を増やすために値下げをしたが、
当面は一都三県を中心に店舗を増やしていく方針。今のところ神奈川県に1店もなく、埼玉県も3店しかないので、まだ攻める余地が残されている。将来的には、全国で300店を展開する計画である。