その会議の模様を書いた記事がある。
厚労省職員から、従業員500人以上の事業所について東京都では抽出調査をしており、東京以外への拡大を計画しているとの発言があった。西村委員長は「抽出調査は重大なルール違反」と指摘し、統計の信頼性確保の観点からも危機的状況だとの認識を示した。
(19年1月11日 朝日新聞デジタル)
西村委員長は統計調査で賃金の上昇率が異常に高く出ていることを疑問に思っていた。そこに、厚労省からルールと異なる手法で調査を行ってきた事実の披歴があった。それで、過去の数字が低く出過ぎていたことに気づき、厚労省を追及するうちに、昨年1月から全数調査の結果に近づけるよう“復元”の計算をする方式に切り替えられていたことが判明したのではないだろうか。
今年1月12日付の朝日新聞は“復元”のやり方について次のように報じている。
昨年1月調査分から、対外的な説明もないまま、抽出した事業所数を約3倍する補正が加えられるようになった。その後、低めに算出されていた平均賃金額が実態に近くなった結果、前年同月比で伸び率が高く出るようになった。
東京都の500人以上の事業所について、3分の1だけの抽出調査をするほうが全数調査の場合より全国の事業所全体の平均賃金は低くなる。
逆に、給料の高い東京がルール通り全数調査になり、サンプル数がどっと増えれば、高い数字が出るに決まっている。
一昨年までは前者の調査をし、数値をそのままにしていたが、昨年1月からは後者に近づくよう補正の計算をしたというのである。比較にならない比較をして政府の統計として公表していたわけだ。
担当部課は前からの引継ぎで抽出調査をしてきたため、ルール違反という意識が希薄だったかもしれない。
しかし、優秀な官僚ともあろうものが、抽出調査によって実態より低い数字になっていることをわかっていなかったとは、とうてい思えない。
決まり通り全数調査に近い数字を算出すれば、前年比が大幅にアップすることを当然認識していたわけで、もし官邸から「賃金が上がっているデータを出せ」と指示されれば、方法を思いつくくらい、いとも簡単だっただろう。
厚労省の中井雅之参事官は記者に「昨年1月調査分から補正したのは意図的な操作だったのか」と質問され、「真実を統計で客観的に伝えることが使命。意図的な操作は全くない」と型通りに否定した。しかし、素直に納得できる人は少ないのではないか。









