【書評】おかしな司馬史観。乃木希典が愚将ではないこれだけの証拠

 

乃木愚将論に対しては少なからぬ反論があるが、司馬は一度たりともこれらの意見に対応していない公開の対談も拒否していた。著者は「見解の相違ではなく、あまりに多すぎる史実の誤りに、彼は資料を本当に読んでいるのか疑問を持つようになった」と書く。「小説が面白いのは結構なことだが、それが歴史の事実となってしまうと大変だ」と心配するが、既にそうなっているようだ。

「司馬氏が膨大な資料を集めながら、とうとうノモンハンについて1行も書けなかったのは、『坂の上の雲』を書いたあとの苦い後味が原因ではないだろうか」。NHKは大河ドラマに『坂の上の雲』の採用を再三希望したが、生前の司馬は拒み続けた。没後、2009年11月から2011年12月まで3年にわたりNHKがテレビドラマの特別番組を放送した。乃木、伊地知の扱いときたら、案の定……。

乃木は柄本明、伊地知は村田雄浩。この風采の上がらぬ、むしろダメな人物役に向いた見た目の二人を、一国の興亡をかけた大戦争の最重要人物に配するとはなんという悪意だ。高橋英樹の児玉源太郎のかっこよさといったら。架空の話なんだけどなあ。「第一回総攻撃の損害多発の原因は、乃木や伊地知の無能のためなどいう輩こそ、戦術戦史にまったく無知な人間という他はない」。

ステッセルも感服した火力集中をやったのは、総司令部から来た児玉である、というのは砲兵の知識がまったくない司馬の空想から生まれた作文だ。公刊日露戦史が児玉について一言も記述していないのは当然である。この本は厳しい実戦を何度も経験した軍人が、自らの体験に立脚して検証した「戦場の実相」を描いたものである。桑原嶽さんは大正8年生まれ、平成16年逝去。

編集長 柴田忠男

image by: beibaoke / Shutterstock.com

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