【安倍政権】疑わざるを得ない日本政府の危機管理意識の低さ

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「必要性は直ちには見いだし難い」だと?

『NEWSを疑え!』 第359号(2014年12月25日号)

安倍晋三政権に腰を据えて外交・安全・保障の懸案に取り組んでほしいと期待していた矢先、次のようなニュースが飛び込んできて、冷水を頭からかけられた気分です。

「緊急事態管理庁」政府、新設見送りへ

「政府は18日、危機管理体制のあり方を検討する関係副大臣の会議を開き、中間報告をまとめた。

自民党が衆院選政権公約で新設を検討すると明記した『緊急事態管理庁(仮称)』について、『必要性は直ちには見いだし難い』として、当面は見送る方向を打ち出した。

同管理庁は、危機管理を専門とする職員を有し、省庁横断で大災害などに対応することを目的としており、自衛隊や警察の出動を命令する権限などを持つことが想定されている。省庁や自治体の枠を超えて大災害に対応する米国の専門機関『連邦緊急事態管理庁(FEMA)』を参考にしたものだ。

中間報告は、危機管理の強化策として、省庁間や自治体との連携を強化、人材育成などを進める必要があると指摘した。年度内に最終報告書を取りまとめる方針だ」(12月19日付け読売新聞朝刊)

「必要性は直ちには見いだし難い」とは、民主党政権になる前の自民党政権時代、国家の司令塔である国家安全保障会議(日本版NSC)と危機管理庁あるいは緊急事態管理庁(日本版FEMA)について、耳にたこができるほど聞かされた言葉です。

別な言い方では、「屋上屋を架すがごとし」というものが繰り返されました。

いまある省庁で対応できるのだから、日本版NSCや日本版FEMAを創設する必要はない、というのです。

それでも安倍首相は第1次政権のとき、国家安全保障に関する官邸機能強化会議によって議論を進め、第2次政権が軌道に乗った2014年1月、国家安全保障会議と国家安全保障局をスタートさせました

それまで省庁の縦割りに阻まれていた首相官邸の機能は、国家安全保障局によって健全化され、首相の耳目であり、手足としての役割を果たすに至っています。懸案だった日中首脳会談にしても、国家安全保障局の上級スタッフが水面下で詰めを行った結果です。

この国家安全保障局の働きを前に、それまで「屋上屋を架すがごとし」と不要論を唱えてきた人たちは、なんと釈明するのでしょうか。

同じことは、日本版FEMAについても言えるのは間違いありません。

エボラ出血熱患者による「自爆テロ」のような典型的な危機に対して、適切なタイミングで必要な措置をとることができるか、ベッド数や搬送手段を超える数の患者が同時多発した場合にどうするのか…。首相が統裁官となって図上演習をすれば、「必要性は直ちには見いだし難い」などと暢気なことを言っていられないことは一目瞭然のはずです。

過去の典型的な危機をいくつか選んで、同じように図上演習すれば、さらに日本版FEMAの必要性は明らかになるでしょう。福島第1原発の事故ほどでなくとも、ロシアのンカー「ナホトカ」の船首が福井県の海岸に漂着したケース(1997年)など、必要な手立てを迅速に講じていたら、漂着の事態は避けられたと思われるのです。

「必要性は直ちには見いだし難い」「屋上屋を架すがごとし」という言葉が出てくるのは、すべてを官僚機構に丸投げし、政治がリーダーシップを発揮していない証拠でもあります。

危機管理の要諦は「拙速」です。雑な部分が残ろうとも、迅速に安全を確保ることが基本です。「巧遅」に陥っては国民の安全を守ることはできません。年末年始にまたがってでもよいから、直ちに行動に移ってほしい。安倍首相へのお願いです。

 

『NEWSを疑え!』 第359号(2014年12月25日号)

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。
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