選挙対策で「北方2島返還」を安倍首相に吹き込んだ政治家の名

 

そもそもの動機不純が禍

この日露領土交渉の新局面は、昨年9月ウラジオストク東方経済フォーラムでの安倍首相とプーチンのやりとりから始まった(本誌No.963・969)。その場ではドギマギして苦笑いするばかりだった安倍首相が、プーチンが投げた餌に食らいついて行ったのは、私の推測では2つ理由があって、1つには、昨春以来の米朝関係の急展開に翻弄されながらも、何とかトランプの力に縋って日朝首脳会談を実現して外交成果に仕立てられないかという他力本願の画策が破綻したこと。もう1つには、そうならば国内に目を転じて改憲問題に全力を集中し、昨秋臨時国会で議論を軌道に乗せ今年の通常国会中に両院で国民投票を発議してその勢いで参院選をも勝ち抜こうという思惑が(下村博文を要に据えるという軽薄極まりないお友だち人事が裏目に出て)潰れたこと。

これでは参院選を戦い抜く目玉が何もなくて困ったなということになって、そこで安倍首相が思いついたのが、「そうだ、北方領土だ」ということだったのではないか。いや本人が思いついたのではなく、たぶん鈴木宗男が「あの9月のプーチン発言を逆手にとって2島返還論で踏み込むチャンスですよ」とでも吹き込んで、安倍首相がすっかりその気になったのかもしれないが、いずれにせよ、どうしたら参院選までに何やら目覚ましい内外成果を打ち上げなければならないというところからすべてが発している、その動機が不純なのである。

しかも、28日に始まる今年の通常国会は、そもそもビックリするほど審議時間が少ない

3月末までに、10月の消費増税への景気対策を含めた予算案を成立させなければならないが、これ自体がアベノミクス6年間と黒田日銀のパフォーマンスの徹底総括を抜きにしては論じられない大テーマである。それを何とか乗り切ったとしても、4月は統一地方選挙、5月にかけては現天皇の退位新天皇の即位という世代わりムード一色。超大型連休明けから6月の会期末までは、いくつかの重要法案を仕上げるのに精一杯となる。しかも参院選があるので大幅な会期延長はできない

そのため昨秋段階では、普通は1月末に招集される通常国会を、正月明けの1月4日召集、7日から審議開始とすることで3週間の審議期間増を確保する案が有力視されていた。それが例年どおりの1月末召集に落ちついたのは、2つ意味があって、1つは、この会期中に改憲発議が出来なくても仕方がないという断念。もう1つは、1月14日の日露外相会談と22日の同首脳会談をつうじて、6月までの平和条約基本合意が達成される可能性に賭けるという決断である。ところが日露交渉は巧く転がらず、そこへ厚労省の勤労統計のデタラメという思いもよらぬ大問題が勃発、国会は冒頭から大荒れとなる気配となり、全てが狂ってしまった

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