明治ひとり勝ちのヨーグルト市場に異変。いま何が起きているのか

 

新たに浮上した「ギリシャヨーグルト」ブームの風

そして、機能性ヨーグルトのブームが一段落した今、新たなヨーグルトの成長エンジンとなりそうなのが、ギリシャヨーグルトである。これは、水切りを行い濃縮されたヨーグルトで、高たんぱくであるのが大きな特徴。合わせて脂肪分ゼロをアピールする商品も多い。チーズケーキに近い食感で、腹にたまるので、サラダチキンなどと同様にフィットネスのブームと共に伸びている。

アメリカでは04年のアテネ五輪を機にヒットして、主流になっているヨーグルトで、市場の5割を占めるまでに達しているそうだ。

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日本でのギリシャヨーグルトの草分けは、森永乳業「パルテノ」。3倍濃縮で濃厚かつクリーミーな味わいの商品で、酸味が少なく酸っぱいものが苦手な人も食べやすい。発売は11年。しかし、この頃から機能性商品が大ブームとなり、埋もれてしまってしばらくは売れなかった。

15年になって果肉ソース入りがヒットし、ギリシャヨーグルトの認知度も上がった。現状、日本のギリシャヨーグルトの市場は100億円を超える程度と目され、55%ほどを森永が握っている。

次いで、ダノンジャパンが「ダノンオイコス」を15年に発売。10年にアメリカで発売以来、フランス、イギリスなど世界8ヶ国で販売、アジアでは初の展開であった。通常の3倍の乳原料を使いたんぱく質も2倍。特に女性の間食ニーズを狙った。

また、ダノンジャパンはイオンのPBで発売した「トップバリュ セレクト ギリシャヨーグルト」の生産を15年から行っており、両ブランド合わせて森永に次ぐ高いシェアで市場を引っ張っている。

ダノン製品は「パルテノ」よりも固くて小腹を満たす満足感が高く、脂肪分ゼロも売りだ。

ギリシャヨーグルトの活性化は、明治が「明治ザ グリーク ヨーグルト」を18年4月に発売したことで加速されている。この商品も濃密な風味と脂肪ゼロが売りだが、食感は滑らかである。どの商品を選ぶかは各人の好みだろう。

明治・広報によれば「特にフルーツソース入りの商品で、ギリシャヨーグルトのニーズの高さを感じたので開発に踏み切った」とのこと。

現在はフルーツソース入りで、ブルーベリーミックス、フルーツミックス、グレープフルーツと3つの商品を出しているが、森永とダノンがヨーグルトの下にソースが隠れているのに対して、ヨーグルトの上にソースが乗っている。しかもソースの味付けも濃厚だ。このため、森永とダノンはプレーンの味とソースが混じった味の変化が楽しめるのに対して、明治は濃厚なソースの味が前に出た商品になっている。

商品の違いが、消費者の購買行動にどのような影響をもたらすか。注目される。

それにしても、ブルガリアとギリシャは隣の国で、明治は節操がない気もしないでもないが、アメリカの市場を見れば、ギリシャヨーグルトが日本のヨーグルト市場の2.5%に過ぎない現状のままということはなく、のびしろが期待できる。

1970年代から新しいヨーグルト市場を切り開いてきた明治にとって、他社を追いかける新しい展開だ。ギリシャヨーグルトのイメージが薄い明治が、どう巻き返して森永、ダノンに迫るのか。このまま先行2社が逃げ切るか。

また、激しい競争にさらされている機能性商品を、明治はどう立て直すのか。

明治のひとり勝ちが続いてきたヨーグルト市場が、にわかに風雲急を告げる情勢となっている。

Photo by: 長浜淳之介

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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