止まらぬZOZO離れ。前澤社長が踏んだ「業界の闇」という名の地雷

 

「ゾゾ離れ」でBtoB事業にも大きな痛手

ライトオンは2021年8月期までの3カ年の中期経営計画においてネット通販を成長戦略の中核に据え、自社の通販サイトを強化する方針を掲げている。ゾゾタウンやアマゾンなど外部の通販サイトでも販売を強化していくとしていたが、やはり主眼は自社サイトの強化にあったのだろう。そういった状況で、手数料が他の通販サイトと比べて高いとされるゾゾタウンで無理をしてまで販売する必要はないと考え、アリガトーの導入をきっかけにゾゾタウンから撤退したのではないか。

ゾゾタウンは圧倒的な販売力を誇るが、出店者は販売金額の3割強とされる手数料を支払わなければならず、もうけが少ないとの不満の声が少なくない。自社サイトの顧客がゾゾタウンに流出してしまえば、その分、利益は減ってしまう。利益率の改善を目指しているライトオンとしては、高い手数料を支払わなければならないゾゾタウンではなく自社サイトで販売を伸ばすことで利益率を改善したいとの思惑もあったと推察される。

ライトオンのようにゾゾタウンからの撤退、もしくはゾゾタウン依存からの脱却を図りたいと考える企業は少なくないだろう。オンワードHDがゾゾタウンから撤退したのも、できるだけ自社サイトで売りたいとの思惑が大きくあったはずだ。

ユナイテッドアローズもそうだろう。同社は開設当初からゾゾタウンに参加し今も出店を続けているが、脱ゾゾタウンは進んでいる。自社サイトでの販売を強化した結果、18年3月期の自社サイト経由の販売割合は前期比3ポイント増の23%に拡大した。一方、ゾゾタウン経由の割合は2ポイント減の57%に低下している。現状はゾゾタウンに強く依存している状況だが、脱ゾゾタウンが徐々に進んでいる。

アローズが自社サイトの開発体制を変更すると表明したことも見逃せない。アローズは現在、ゾゾの子会社であるアラタナに通販サイトの開発を委託しているが、19年10月以降にそれを改め、開発委託先を切り替えるという。これによりアローズのネット通販は自社運営に移行することになり、柔軟な対応ができるようになるほか、将来的には収益の改善が期待できる。これも「ゾゾ離れ」の一つといえるだろう。

このことはゾゾにとって大きな痛手だ。アローズはゾゾのBtoB(企業向け)事業における大きな取引先であるため、アローズが離脱することでゾゾはBtoB事業において大きな打撃を被ることになる。18年3月期のBtoB事業の取扱高は75億円で、20年3月期に200億円を目指すとしているが、計画の見直しが避けられないだろう。

このように、収益改善など実利の面から「ゾゾ離れ」が進んでいるわけだが、実利以外の面が起爆剤となって「ゾゾ離れ」が起きていることも見逃せないだろう。特に問題となっているのが前澤社長の言動に対する感情面での反発”だ。前澤社長はツイッターで女優との交際について発信したり、総額1億円のお年玉企画を打ち出すなどし、批判を浴びた。これらに対しアパレル企業が「前澤社長はけしからん」と感情的になり、それが「ゾゾ離れ」につながった側面があるのではないか。

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