話は複雑化しやすい、と言いましたが、いかに話すテーマが壮大になろうとも、「横着ファイリング話法」であれば、結果的にストレートに最短距離を行くことができます。
話すことは、よく、道に喩えられます。武士道や茶道などの道ではなく、道程としての道です。話の寄り道、なんて言ったりしますよね。
例えば、東京から京都まで東海道を歩くことになったとして、目標を京都に置いただけでは、必ず途中で道に迷ってしまいます。遠くに行きつくためには、遠くの目標を見据えつつも、まずは次の宿場、品川宿にたどり着くことに集中するものでしょう。 「うまく話せないで頭が白くなってしまう人、話した後で不満が残ってモヤモヤする人は、話す前にたくさんの情報=言いたいことを持ちすぎている」と最初に申し上げましたが、この道程で言えば、京都に行くことばかり考えてしまっている、ということです。だからすぐに道に迷ってしまうのですね。
- ゴールを近くに設定すればするほど
- そのゴールに着くことだけに集中でき、早くゴールにたどり着く
- そこから改めて次のゴールを目指せばよい
「横着ファイリング話法」では、この近くのゴールのことを、小分けした空フォルダと呼んでいます。別の言葉で言えば、「話す枠」でしたよね。この「枠」とは、「今ここで求められている話」ということです。
まずはその枠を認識することが大事。それが話す目的ですからね。しかもその範囲を、できる限り厳密に定義すること、でした。この段階が曖昧だから、論点がぼける。話す自分が、わけがわからなくなる、わけです。
東京から京都までを歩く例で言えば、京都までという大きなフォルダーは用意しつつも、品川までたどり着くという小さなフォルダーも作っておき、まずはその小さなフォルダーに何を入れるか、品川までの道程をどう歩くかに集中する、ということです。それの繰り返しです。
話のテーマが壮大であればあるほど、近いゴール、小さいフォルダー、限定された話の枠に集中するほうが、内容の密度が濃く、充実し、聞き手の満足度が高くなります。そしてそれは、話が小ぎれいにまとまっていることより、圧倒的に強力で、魅力的です。
繰り返しになりますが、膨大な情報をうまくまとめようとするより、絞り込んだ「話の本質」を膨らませることを考える。これが、「横着ファイリング話法」の狙いの、ひとつの側面です。
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