県内はおろか県外からの客足も途絶えず、リピーターも多いという兵庫県のとある精肉店。お肉を買うためにわざわざ県外まで足を伸ばそうと思わせる魅力はどこにあるのでしょうか。MBAホルダーの青山烈士さんは、当の精肉店「和牛うらい」はディズニーリゾートとの共通点があるとし、自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でその戦略・戦術を詳細に分析しています。
独自性
優良経営食料品小売店コンクールにて農林水産大臣賞を受賞した、県外からもお客を集める人気精肉店を分析します。
● 和牛うらい(精肉店)
戦略ショートストーリー
肉好きな方をターゲットに「独自の厳しい基準や自前で加工・熟成させるノウハウ」に支えられた「美味しい」「豊富な品揃え」等の強みで差別化しています。
「和牛うらい」でしか食べられない熟成和牛やリーズナブルな自家製加工品、自家製惣菜などが顧客の支持、遠方からの来店につながっています。
■分析のポイント
「和牛うらい」は兵庫県にお店がありますが県外からのお客さんも多いそうです。ですが、一般的に県外の精肉屋さんに行くということは、なかなか考えられませんよね。多くの方は近所のスーパーで事足りるはずですからね。そこで今回は、なぜ、遠方からくるのか(遠方からでも来店する理由)について考えてみたいと思います。
当たり前ですが、遠方からお店に行くには「時間&手間」がかかります。ですから、この「時間&手間」と「得られる価値」を天秤にかけて「得られる価値」の方が大きいと思わなければお店に行くという判断には至りにくいです。
そういった視点でみてみると、まず、「和牛うらい」にはお得感はあるようですが、恐らく、「時間&手間」と「得られる価値(お得)」を天秤にかけた場合、相当お得(例えば半額くらい)でないとつり合いそうにありませんので、お得感のために、「和牛うらい」にわざわざ遠方からやっていくるというのは考えにくいです。
また、品質はどうでしょうか。品質が高いことは、強みであると言えますが、高品質な精肉を扱うお店は「和牛うらい」だけではありませんので「時間&手間」と「得られる価値(品質)」を天秤にかけた場合も、価値が大きく上回るということにはならないと思います。
では、お得感や品質よりも重要な価値は何か。それは「独自性」だと思います。つまり、ここでしか買えないもの、ここでしか食べられないもの、があることが大きなポイントになるということです。
これは遠方から多くの顧客を集める有名企業であるオリエンタルランドにも共通する部分だと思います。オリエンタルランドが運営している「ディズニーリゾート」が提供している価値のひとつは、まさにここでしか味わえない、ここでしか体験できないことがあるということであり、この点が差別化のポイントになっています。
そして、リピート客が多いというのも「和牛うらい」と「ディズニーリゾート」の共通点です。リピート客が多いということは、満足度が高いということの表れですし、また来たいと思う顧客が多いということです。来店した顧客の期待を裏切らないことが、顧客との信頼関係につながり、またリピートしてくれることにもつながっていくわけです。
しかし、顧客の期待に応え続けるのは、「言うは易く行うは難し」ですから、顧客との関係性を維持することは容易ではありません。だからこそ、顧客の期待に応えてきた結果がブランドになり、顧客がそのブランドをブランドとして認識することになるわけです。
今回は、精肉店の「和牛うらい」の引き合いとして「オリエンタルランド」を出しましたが、精肉店とディズニーリゾートに共通点があるということは、戦略を考えるうえで、面白い事例だと思います。今後も「和牛うらい」に注目していきたいです。