3つ目の要因は、北アフリカ・中東で再燃する“アラブの春”の兆候です。それは、アルジェリア、スーダンなどの独裁国家での体制への反抗が高まっていることから、他国への混乱の波及が懸念されています。
例えば、アルジェリアでは、84歳で、もうすでにほとんど公務が執行できていないブテフィリカ大統領が4月の大統領選に出馬することを公言したことで、変化を訴える多くの国民が反対を表明し、学生たちが各地でデモを行い、それに国軍が出動して衝突を繰り返すなど緊張が一気に高まりました。「シリア内戦の次は、アルジェリアではないか?」という懸念が、紛争調停のコミュニティでは囁かれ始めるくらいです。
では、ブテフィリカ氏が出馬を諦めて引退すれば済むかと言えば、決してそうではなく、かつてのリビアのカダフィー氏のケースの様に、独裁の綻びは国家破綻の可能性をはらむため、非常にデリケートな調整が必要です。
これまで、実は、このようなデリケートな調整の影に、エルドアン大統領とトルコがいました。しかし、トルコ経済の低迷や中東地域でのデリケートなトライアングルへの対応、対シリア、対クルド人対応、そしてドイツ国内のトルコ人をめぐる欧州との攻防など、多方面での綱引きを行ない、自らの調整力に陰りが見える中、混乱の北アフリカの情勢まで調整できる余裕はないのが現状のようです。
もし、アルジェリアをこのまま放置していると、仮にブテフィリカ氏が強硬に出馬しても、引退を決めて後任を指名したとしても、恐らく混乱が沈静化することはなく、もしかしたら、シリアやイラクで衰退が報じられているISの残存分子が巣食うきっかけを与えてしまうかもしれません。それは、これまで機能してきた「トルコのグリップ」が効かなくなる危険性の一例と見て取れます。
ではどうするのか?正直、これ!という答えは見つからないのですが、エルドアン大統領としては、一旦表立った介入は控えてみるのも一案ではないかと考えています。安定を保つための水面下での調整などは継続すべきだと思いますが、アメリカやロシアを刺激するゲームや、ドイツ国内の政治への介入などは控え、まずはトルコの立ち位置を見直し、トルコがバランサーとして活躍するための戦略を、今一度再構築すべきでしょう。
もし、それに失敗したら、トルコも中東地域の混乱の渦の中で存続の危機に直面するかもしれません。そうなった場合の、国際情勢へのショックの度合いは、想像することもできません。
私たちにできることと言えば、関心を持ち続け、出来る限りの働きかけをすることでしょうか。トルコが絡む諸々のイシューは、決して他人事とは言えないのですから。
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