リーマン超えの大恐慌か。日本を襲う「合意なきEU離脱」ショック

 

「そもそもキャメロン前首相が、国民投票での“民意”を読み違えたのだ」「メイ首相にカリスマがなかった。彼女は、自分がEUとの窓口になることをこだわった」「英国の離脱派に、全く具体的なアイデアがなかった」

というように、英国サイドの問題が大きいとする意見が多く聞かれるのですが、私は、英国側に問題はないとは言いませんが、それよりも、今回のBrexitをめぐる協議を見ていて、EUが抱える根本的な問題が明らかになり、それが今回の協議を非常に複雑かつ困難にしてしまったと考えています。

1つ目は、本当のリーダーシップの欠如です。形式上、Tusk大統領が「EU加盟国首脳と並ぶEUの首脳」、そしてユンケル欧州委員会委員長が行政のトップと言う形でリーダーは存在するのですが、彼らはEU首脳会議の全会一致の決定なくしては、何も自由に発言できず、かつ、独自の方向性を示すことが出来ません。

今回のBrexitを巡っては、旧中東欧の加盟国やスペイン、イタリア、ギリシャなどの南側の加盟国の中には、英国からの要請に柔軟な立場を取っている国もあったのですが、ドイツとフランスという2大主要国に至っては、非常に批判的であり、今回の猶予策の内容に対しても最後まで反対していたらしいということもあり、なかなかコンセンサスは得られず、かなり長く、英国を退席させた形式での首脳会議での協議で、すでに述べた“絶対的な期限”を設定することに至っています。

このプロセスで、リーダーシップを発揮したのは、Tusk大統領でもなく、ユンケル委員長でもなく、実際にはフランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相の意向が反映されたというのが事実のようです。二人に関しては、「もうこれ以上、英国の国内問題のために、こうやってブリュッセルで首脳会議を開くべきではない。もう終わりにすべきだ」と強硬に主張したそうです。

これまでにも、Tusk大統領とユンケル委員長は、英国を突き放すようなコメントを繰り返してきましたが、それらはお二人の“本心”というよりは、独仏の首脳の強い主張を受けて、コンセンサスがない中で取り得る最もハードなラインだったようです。

2つ目は、EU側が直面する時間的な制約です。リーダーシップの欠如に加え、欧州議会の選挙が5月23日に控え、すべての代議員が決まった段階で、次のEU執行部(大統領、委員長、閣僚)が一新されるので、EUサイドは、テクニカルに、その日付を超えるいかなる決定もできない、というジレンマに直面しています。

言い換えると、現執行部が機能している間にBrexitの問題を解決しておく必要がEU側にあるということです。リーダーシップの欠如の問題と関連してお話すると、現時点では、英国側から協議内容の再交渉を持ちかけられても、時間的に対応することが出来ず、出来ることと言えば、以前決めた内容を盾にハードラインを選択することだけです。

ゆえに、いろいろと英国側とは協議していても、EUそして欧州委員会側にクリエイティブな交渉を行う余地は残されていないという、とても不幸な事実があります。

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