【書評】中国政府が「クズ」と罵る、日本に憧れる中国人「精日」

 

大手検索サイト「百度」の「精日」解説では「極端に日本軍国主義を崇拝し、自らの民族を恨み、精神的に軍国主義の日本人と自らを同一視する非日本国籍の人々を指す。(略)このような人々は中国や韓国などに分布し、知識レベルの低い若者たちが主体であり、『日雑日本雑種)』とも呼ばれる。精日は日本軍国主義に熱狂するという明かな特徴があり、他国への興味を自分の国家や民族に対する侮辱や冒涜の上に築いている」と、政権側の定義を用いている。

共産党政権が「精日」を忌み嫌うのは、日本的価値観への支持が、自らの愛国イデオロギー(抗日、反日)や統治を正当化する歴史観への否定に繋がるからだ。しかし「精日」は、日本からいいものを謙虚に学ぼういいものはいいと言ってなぜ悪いのか、と考えているだけなのだ。一党独裁のもとの中国人はまるで機械のような均一な思想を持っている、というわけではないことが分かる。

現地取材における相手の個人情報は危険だから出さない。表紙には4人の精日の若者が顔出ししているが、たぶん日本に住んでいる人なのだろう。今の日本には「精中」や「精韓」の日本人もいるが、自らを誇らしくそう名乗ることはせず、ただただ母国を貶める言動に勤しんでいるのだから情けない。

観光で初めて日本を訪れた中国人の多くは、国家が宣伝する日本の姿が真実の日本ではないことに驚くらしい。政権やメディアが作り上げた日本のイメージが、あまりに非現実的な歪んだものであるため、真実を知ると愕然とし、日本への反感が一気に好感に変わるという、劇的な意識変化が起きているようだ。

言論NPOという組織が2018年10月に発表した日中両国の世論調査では、日本に良い印象を持つ中国人が42.2%と、前年より10.7ポイントも改善したそうだ。その理由は米中貿易摩擦など中国の対外関係の悪化にあり、風向きが変わればまた反日キャンペーンに転じる可能性もある。その逆流に歯止めをかけることができるのは、「精日に象徴されるような新たな中国人だと著者はいう。

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