「精日」と呼ばれる中国の方々がいるのをご存知でしょうか。日本人や日本社会を高く評価し自らの生活に取り入れる人々のことで、このような若者たちが増えている一方、中国政府は彼らを「中国人のクズ」と吐き捨てているのだそうです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、そんな「精日」について詳細に解説した書籍をレビューしています。
偏屈BOOK案内:『精日 加速度的に日本化する中国人の群像』
『精日 加速度的に日本化する中国人の群像』
古畑康雄 著/講談社
「精日=精神的日本人」と呼ばれる新しい中国人が、日中両国で注目されている。著者の取材で得た感触では、「もともと日本人ではないが、日本人や日本社会の生活様式、文化、価値観を高く評価し、自らの生活にも取り入れることで、できるだけ(彼らの考える)日本人に近づこうとする外国人(実際には中国人)」のことだという。聞き慣れない言葉だが、どこの誰が言い出したんだ。
著者が初めて「精日」という言葉を聞いたのは、2018の全人代における王毅外相の発言だった。「精日をどう思うか」という記者の質問に「中国人的敗類」と吐き捨てた。敗類とは、集団の中の裏切り者、堕落した者、人間のクズという意味で「中国人のクズ」、昔の日本の言葉で「非国民」のような表現である。
日本メディアは「精日=日本の軍服を着た親日派の若者」という、中国当局やメディアのレッテル貼りをあっさり鵜呑みにしているが、この本を読めば、それがまったくのウソであることがわかる。「精日」とは中国共産党の愛国ナショナリズムというプロパガンダに対し「NO!」を表明する人たちであり、中国政府との距離感の変化を見せる、新しい中国人のことを指すのだという。
この本では「精日」という言葉を手がかりに、昨今の中国の対日意識の変化を捉え、併せて日本人が今後どう中国と向かい合うべきかを考える。著者は共同通信で2001年に中国語ニュースサイト「共同網」を立ちあげた人で、「作られた反日」が転換期を迎えている昨今、「精日」の正当な評価を望んでいる。
中国の反日デモは2012年9月以来、全く起きていない。しかし政府やメディアは、未だに過去の「日本=侵略者」という見方を国民に押しつけている。観光等で来日し、現実の日本を知った人は日本に好感度が高い。「精日」とは、温和、礼節、清潔、秩序、勤勉、協調、謙虚といった、日本人の優れた特性やライフスタイルを尊重し、学び、自分の生活に取り入れようとする中国人をいう。