現役30年のアナウンサーが伝授「5G時代の見せながら話す技術」

 

では、名前を言うことの次に、効率的な表現はなんでしょうか?
答えは、相手が知っていそうな、似ている他のものの名前を出し、それを修正する表現を付け加えることです。例えば、ブルーデージーであれば、菊の花を青くしてシュッとスマートにさせたような感じ…とか。
ただ、上記のネモフィラになりますと、似ている他のものの名前を考えるのがちょっと難しいですね。オオイヌノフグリを5倍ぐらいにしたような…と、私も考えてみたんですが、オオイヌノフグリという名前で、どのぐらいイメージを湧かせられるか不明で、そのオオイヌノフグリの説明からしなくてはいけなくなりますから、ちょっと遠回りで聞き手を混乱させてしまう恐れもあります。

そういう場合は、詳細を説明してわかってもらうことになります。丈が20センチぐらいで、花の大きさが2センチ程度の、青くて丸い可愛い花…ぐらいの説明が必要になります。
こう考えると、ものの名前というのは、人間同士の間の共通認識として、すさまじい分量の情報を含んでいるということでもありますね。

効率の良い説明をするときには、このような共通認識を上手に利用するのが、ひとつのコツになります。相手が既にわかっていることを引き合いに出すことによって、情報の伝達を早くするわけです。

見えない状態のものを説明する、とは、こういうことです。この点、みなさまの表現生活の一助にしていただければと思います。

見せながら話す、インフルエンサーになる技術

そしてここからが今回の主題、見せながら話すケースです。自分と同じように相手にもそれが見えてしまっている場合、上記の花の説明のような、相手のイメージを喚起するような表現は、ほとんど不要になります。百聞は一見に如かず。一目瞭然、ですからね。

ネモフィラの説明で、丈が20センチぐらいで、花の大きさが2センチ程度の、青くて丸い可愛い花…という表現は、「こういうやつ」というだけで済んでしまいます。そのものの定義を話すことが、効率的な表現ではありますが、さすがに、見てもらうことにはかないませんね。

ちょっと味気ないようにも感じますが、おそらくこれからの未来、その味気なさを逆手に取るようなサービスも生まれてくるでしょう。つまり、情報が足りない状態で、イメージを楽しむような環境の提供です。読書がそれに当たりますし、音声だけのコンテンツが、娯楽として廃れることはないと思います。
また、味気のない一目瞭然のコミュニケーションについては、一緒に見たこと、見えたものを「始点にして」、さらに話を深めることができるチャンスであり、見えたことの先にある話の面白い人が、必要とされる表現者になる、と考えるのが良いと思います。

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